
複数回に渡って行われた、『Marvel’s Avengers』のβテストをプレイした率直な感想をお届けします。
製品版が楽しみ!という人は、これを読んで気分を害する可能性が高いと思うので、そっと戻るボタンを押した方がいいかもしれません。
『Marvel’s Avengers』は、『Destiny』や『Anthem』といったゲームによく似た、ルーターシューター系ライブサービスゲーム(本作は近接戦闘がメインなので、ルーターブロウラーとでも言うべきか)。
『バットマン:アーカムシリーズ』や『Marvel’s Spider-man』のような、シングルプレイヤーのアクションアドベンチャーゲームではないのでご注意を。
ソロ、もしくはマルチプレイで様々なミッションをクリアし、レベルを上げたり装備を集めたりしてヒーローを強くしていく、というのがこのゲームのメインコンテンツになっています。
キャラとアクション
全てのキャラで基本操作は同じですが(弱・強攻撃、遠距離攻撃、回避、パリィ、3種のアビリティ)、当然それぞれのキャラに固有のアクションが用意されていました。
敵を掴んで暴れまわるハルク、腕をぶん回して戦うカマラ、飛行しながら攻撃できるアイアンマン、グラップリングフックと銃で敵を翻弄するウィドウと、各キャラの個性がしっかりとアクションに生かされています。
各キャラには独自のスキルツリーがあり、レベルアップに伴ってスキルを習得して、新しいコンボが使えるようになったり攻撃が強化されたりします。
アクションの中にはMCUからの影響を色濃く感じるものもあって、ファンであればニヤリとできる要素は多いと思いました。
以下に、4キャラを使ってみた感想を簡単にまとめておきます。

腕や足をビヨンビヨン伸ばして戦うので、攻撃範囲は割と広め。
遠距離攻撃は自分の手を伸ばしてパンチするため、射程距離は全キャラ中で最も短い。
その代わり、スキルを習得すれば敵を掴んで振り回したり叩きつけたりといったことが出来るようになり、そこそこ楽しい。
アルティメットアビリティを使うと巨大化でき、このときだけ破壊力が全キャラ中トップになる。
通常は怯まない敵をお手玉出来るようになり、弱コンボのグルグルパンチでどんな敵でも瞬殺できてしまう。

雑魚を掴んでブン回したりブン投げたりして、敵を蹴散らすのが楽しい。
重攻撃の範囲が広く、多数の敵を相手取るのにもっとも適したキャラ。
地面を連続でぶったたく範囲攻撃が特に強力で、空中チャージ攻撃からの地上範囲攻撃に続けると爽快。
遠距離攻撃は地面をえぐって投げるという豪快なものでしたが、車やガスタンクなど、ステージに設置されているオブジェクトを掴んでブン投げることが出来ないのは非常に残念。
他のキャラと同等に怯みやすいうえ、怯むと掴んでいた敵を落としてしまうのはどうかと思いました。
常時スーパーアーマー付与ぐらいでちょうど良いと思うのですが…

個人的には、今回使えた4キャラのうち、使っていて最も楽しかったキャラ。
当然のことながら飛び回ることができ、地上でも空中でも自由自在に戦闘を繰り広げることが出来ました。
飛行時の操作感は完全に『Anthem』と同じ。
『Anthem』よりも優れているのは、飛行中でも攻撃が出来るうえに、飛行時間に制限がないという点で、対処が面倒なタレットや空中の敵を真っ先に排除するのに適任。
飛び回りながら攻撃するのはかなり楽しいのですが、遠距離攻撃に必要なエネルギーはすぐに枯渇するので、あまり調子には乗れないのは残念。
アビリティのひとつ「アーク・オーバーロード」を使えば、一定時間遠距離攻撃が撃ち放題になります。
この状態でロケットを乱射すると、ドカドカと敵をぶっ飛ばせて爽快でした。
アルティメットアビリティで「ハルクバスター」を召喚できますが、そんなに強くなかったのでがっかり。
ボタン長押しでランディグパッドを設置することで、他のプレイヤーもハルクバスターに乗れるようになっていました。

グラップリングフックを使って離れたところにいる敵に接近して攻撃が出来るので、戦闘時に移動の手間が省けて使い勝手が非常に良かったです。
ダメージを受けることなく敵を攻撃し続けると攻撃が強化されるので、上級者向けのキャラと言えるかもしれません。
範囲攻撃がアルティメットアビリティ以外にないので、囲まれるとちょっときつい。
精密な射撃が出来る上に、アイアンマンとは違ってずっと射撃し続けることが出来るので、近接戦に向かないタイプの敵にはめっぽう強い(精密かつ連続で射撃できるのは、全6キャラの内ウィドウだけ)。
今作では登場する敵の数が多めなので、乱戦時は遠巻きに射撃しつつ、グラップリングフックを使って突入・離脱を繰り返す感じでプレイするのが良いのかなと感じました。
それぞれ個性が光るアクションが用意されているものの、なにかに特化したキャラ性能というわけではないので、自分の好きなようにプレイすることができます。
反面、全てのキャラが同じような強さに均一化されているため、ハルクの圧倒的なパワーを感じることは出来ないし、アイアンマンで他のキャラよりも速く飛んでいくことは出来ませんでした。
例えば、ハルクは他のキャラよりHPが多く全く怯まない、ブラックウィドウはHPが低い代わりに敵のターゲットになりにくいなど、明確なキャラ性能の違いがあれば、ゲームプレイがより奥深いものになっていたように思います。
そうできなかったのは、マルチプレイヤーのゲームとしてバランスを取るのが難しかったからだと思いますが、取ってつけたようなギアシステムではなく、タンクやアタッカーなどのクラス/ロールシステムを導入すればよかったのでは?とも思いました。
大量生産型ミッション
A-Dayを描いた最初のストーリーミッションは、操作キャラが次々と切り替わり、ど派手でシネマティックな演出も合わさってなかなか楽しいものでした。
が、問題はその後にウォーテーブルで選択できるミッション群がワンパターンだということ。
ウォーゾーンとドロップゾーンの2種類がありますが、最終的にAIM施設内に侵入して敵を倒すor地点を確保するという、どれも同じようなミッションばかり。
ウォーゾーンでは、AIM施設内に侵入する前に広いエリアを探索できますが、目的地であるAIM施設内の構造はどれも似たり寄ったり。
なので、ミッションを数回こなすと新鮮味は完全に失われ、同じようなミッションをただひたすら繰り返している感覚を覚えました。
また、施設内はさほど広くないにも関わらず、複数のエリア間をエレベーターでつないでおり、テンポがかなり悪いのもマイナスでした。

もちろん、製品版ではA-Dayミッションのようにきっちり作り込まれたストーリーミッションがそれなりに用意されているとは思いますが、ほとんどのミッションがこういった量産型なのであれば飽きるのも速いと思います。
インタビュー記事によれば、製品版では単調さを感じさせないぐらいミッションのバリエーションは豊富ということですが、期待して良いのでしょうか。
ギアシステム
他のルーターゲーム同様、ミッションを繰り返しプレイし、敵を倒したり宝箱を開けたりしてギアを集め、少しずつキャラを強化していくというのが本作のゲームループになっています。
地球最強のヒーローたちがちまちま宝箱をあけてギアを回収し、少しずつパラメータを強化していくというシステムそのものに違和感がありますが、そこに文句を言ってもいまさら仕方がないので我慢しましょう。

ギアは4つのカテゴリ(+アクセサリ枠が2つ)に分かれており、それぞれにパワーとステータス補正、ギアパークがついています。
パワーが同じギアでもステータス補正が異なる場合があるので、ギアの組み合わせによっては近接戦に特化したキャラ、体力が多いキャラなど、自分のプレイスタイルに合わせたキャラを作り上げることができるようになっています。
ギアパークは、「ジャスト回避でバフが付く」「軽コンボフィニッシュで敵を小さくする」など、特定の状況下で発生する特殊効果。
レアリティの高いギアには複数のパークがついていて、リソースを消費することで開放されていきます(全てのギアはリソースを消費することで一定回数だけ強化しパワーを上げることができるようになっています)。
見た目の変化は使用するコスチュームに依存しており、ギアは単に能力を強化するだけのものになっています。
個人的に、ギアを変更しても見た目は変化せず、パラメータの数値が上下するだけというのはちょと退屈に感じました。
見た目がダサいギアを我慢して装備しなくてはいけないという、この手のゲームによくある不満はありませんが、かっこいいギアをゲットできたときの嬉しさもありません。
ヒーローチャレンジ
本作には、『フォートナイト』等、最近のF2Pタイトルによくあるパスに似たシステムが搭載されています。
デイリー及びウィークリーチャレンジをクリアすることで様々なコスメティックアイテムがアンロックされていくので、個人的にギア集めよりかはプレイするモチベーションにはつながると思いました。
気がかりなのは、アイテムの下にわざわざ「FREE」という文字がついていること。

これは完全に憶測ですが、製品版ではバトルパスを買わないと入手できないコスメティックアイテムが用意されている可能性が十分に考えられます(最悪のケースだと、各キャラで個別にバトルパスを買わないといけないかも?)。
その他イマイチに感じた部分
パフォーマンス上の問題
ぼくはPS4でプレイしましたが、パフォーマンスは良くないと言わざるを得ませんでした。
安定しない低フレームレート、キツすぎるモーションブラー、過剰なエフェクトのコンボで、乱戦では何がなにやらよく分かりません。
完全に静止した状態でのグラはそれなりにキレイなのですが、上述した理由から戦闘時は画面がぼやけ、まるでSD画質でプレイしているように感じました。
ウザすぎる遠距離エネミー
遠距離攻撃を行ってくる敵が多いうえに攻撃力が高く、こちらは遠距離攻撃を食らうとほぼ確実に怯んでしまうのにはストレスを感じました。
遠距離エネミーは一般的にHPが低く設定されていて1パン2パンで倒せることが多いのですが、本作ではフルコンボを叩き込まないと倒せないぐらいに固いです。
一度に出現する遠距離エネミーの数を減らすなり、HPと攻撃力を抑えるなり、何らかの調整を行ってもらいたいところ。
爽快感が薄い
アクションの手応えが薄く、ヒーローが持つスーパーパワーの強大さを十分に表現できていないと感じました。
ギア集めに意味を持たせるため、雑魚がフルコンボを決めても倒せないぐらいに固いというのに加えて、こちらは攻撃を食らうとほぼ確実に怯んでしまう、というのが要因になっていると思います。
アクションのテンポが遅いので(ポンポンポンとアクションしてほしいところが、ポン…ポン…ポン…と一呼吸置く感じのテンポ感)、1.25倍速ぐらいのスピードにしても良いんじゃないかと思いました。
また、キャラが協力して行うコンビネーション攻撃が、でかい敵に対するテイクダウン以外に用意されておらず、チームとしてのアベンジャーズを体感できないというのも残念でした(噂では、映画『アベンジャーズ』のように、キャップの盾でアイアンマンのビームをはじくことは出来るらしいですが)。
ラグによってアクションの爽快感が損なわれている
マルチプレイで遊んでいると、こちらの攻撃が当たってから敵がリアクションしHPが減るまでにタイムラグが生じるので、アクションの爽快感が大きく損なわれてしまっています。
無敵バリアを持った敵の対処が面倒くさいことこの上ない
一部のミッションでは、無敵バリアを持つ敵が出現します。
無敵バリアを削りきらないと一切怯ませられないうえに、HPにはダメージを与えられません。
1体だけならまだいいのですが、複数体が同時に出現するため、何をどうやって楽しんだらいいのか意図が不明。
単調なボス戦
ウォーゾーンミッションの1つには、巨大なクモ型ロボとの戦闘があったのですが、これが非常に単調でした。
足および体についている複数の冷却パネルを壊す→ダウンしている間に頭を叩くという全く同じ工程を3回繰り返すだけ。
敵の形状が変化するとか、攻撃パターンが大きく変化するわけでもないので、ただ時間がかかるだけで退屈。
他のゲームと違って、雑魚が次から次に湧いて出てこない、という点だけは良かったですが。
最強ヒーローのくせにカナヅチ
本作のアベンジャーズは揃いも揃ってカナヅチなので、川に落ちるとHPがほぼゼロになってしまいます。
川があったのは都会マップの1つだけでしたが、落ちたら問答無用で瀕死というのはちょっと酷いと思いました。
ギアで攻撃が変化しない
『Destiny』等では、ギア(武器)の変更によって見た目だけでなく攻撃自体が変化したため、数値の変化だけでなく、使いやすさや組み合わせを考慮に入れる必要があり、ギアを集めることに対するモチベーションが比較的保ちやすいようになっていました。
しかし本作では、基本的にパラメータの数値が上下するだけ(厳密には”だけ”ではありませんが)。
なので割と早い段階から、ベストギアを自動装備→余ったギアを分解→ギアパークを開放する、という流れ作業になってしまいました。
強くなっている感が皆無
今回のβでは、敵のパワーがこちらのパワーに合わせて上がるという仕様になっていました。
そのため、いくらギアを集めてパワーを上げたところで、常に自分と同じぐらいのパワーの敵と戦わされ続けるため、強くなっている実感はほとんど得られませんでした。
さすがに製品版では、ミッションで敵のパワーは固定だと思いたいですが…
同じミッションでも難易度にばらつきがある
一部のミッションでは、出現する敵の組み合わせがランダムになっていました。
これによって、同じミッションでもバリエーションが生じるようになっていたので、それ自体はいいと思いました。
しかしながら、組み合わせによっては、2分足らずでクリアできてしまうこともあれば、最強クラスの敵がうじゃうじゃ出てきてクリア不可になることもあり、難易度のバラつきが激しすぎます。
クローズドキャプション(CC)の設定が意味不明
字幕をONにすると強制的にCCがONになり、字幕はONでCCはOFFという設定には出来ない。
そのため、英語音声+日本語字幕で遊びたい場合、常にCCも表示されることになる。
CCはどんな音が鳴っているかを書き表したものだが、本作のそれはト書きに近いものになっているのも謎(例えば、「ハルクはアボミネーションに向かってうなり声を上げる」といったように、見ればわかる動作もセットで書かれている)。
バグの数々
- 自分のHPバーが表示されなくなる
- 敵のHPバーが表示されなくなる
- ミッションが超上空から始まる
- 地形にハマって動けなくなる
- AIが操作するミズ・マーベルの腕がずっと伸びたまま表示される
- 敵のHPが一切減らなくなる
- 巨大ボスが数センチほど地面に埋まっており、細かく上下に振動して攻撃しづらい
- 敵の攻撃を知らせるインジケーターが表示されなくなる
- 英語音声を選択しているのに、日本語で再生される
おわり
いちマーベルファンとして楽しみな気持ちはありますし、面白いゲームであってくれ!とも思っていますが、βをプレイした現時点での印象はあまりよろしくないです。
なんだか『Anthem』と同じようなニオイがするんだけど大丈夫だろうか…と不安になるぐらいよろしくない。
一方で、マッチメイキング後にミッションを開始できないバグ、ミッションが完了できなくなるバグは最終βでは起こらなくなっていたり、カメラの揺れをオフにするオプションが追加されたりと、開発陣がきちんとコミュニティの声に耳を傾けて改善してくれているので、製品版のアップデート次第では大きく化ける可能性もあります。
ここで述べたネガティブな感想が、全て的外れなものになってくれることを祈ります。
そんな感じでした。
ではまた~
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