『サイバーパンク2077』クリア後感想 なんだかんだで嫌いになれないむしろ好きというまさにジョニーみたいなゲーム

『ウィッチャー3』でお馴染みのCD Projekt REDが手掛けた、オープンワールド・ファーストパーソン・アクションRPG『サイバーパンク2077』をクリアしたので感想を書き綴っていきたいと思います。

Xbox Series Xでプレイし、総プレイ時間は約90時間。
現在は2周目を最高難易度、ノーマッド、近接寄りの脳筋キャラでプレイしています(1周目はノーマル、ストリート、ハッカー&ステルスキャラでした)。

1.04パッチ以前には2回ほど強制終了を食らいましたが、それ以降は安定しています。
クエストが進行不能になってロードし直したり、音声が途切れたりといったバグは散見されますが、楽しくプレイできています。

Vとジョニーのストーリー

ナイトシティで傭兵稼業を営む主人公Vとその相棒ジャッキーの元に、「Relic」という最先端のバイオチップを盗み出してほしいという依頼が舞い込む。
このRelicには、伝説のロッカー「ジョニー・シルヴァーハンド(キアヌ・リーブス)」の記憶のデータが収められていた。
あるアクシデントがきっかけで、チップを取り込んだVの目の前にジョニーが現れるようになってしまい、Vとジョニーの奇妙な共同生活が始まった…というのが本作のあらすじ。

極力ネタバレは避けたいので詳しくは言及しませんが、一人称視点のゲーム、そしてサイバーパンクという世界観だからこそのストーリーで最後まで楽しめました。
しかし同時に、混沌としたナイトシティの中でどう生きるか、という広い意味でのロールプレイを楽しむことはできないのはもったいないとも感じました。

本作のストーリーは、最初から最後まで大きな一本道が用意されており、その中でVになりきってどう振る舞うかを楽しむものなので、過度な期待は禁物です。

頭の中にいるもう一つの人格「ジョニー」との関係性、というのがメインストーリーのキモになっていて、個人的にはかなり気に入った部分ですが、同時に大きな欠点とも言えます。

ジョニーは事あるごとに目の前に現れては、文句を言ってきたり、忠告してきたり、煽ってきたりします。
はじめはどうしようもないクソ野郎だと思っていたけど、クエストをこなすうちに案外いいやつじゃんと見直したり、それでもやっぱこいつクソだわと思ったりして、本当に実在した人物のように感じられます。

会話の選択肢を選ぶ際には、本当にこれは自分自身の意思なのか?それともジョニーの意思を自分の意思だと勘違いしているのか?いいようにジョニーに操られているのではないか?と考えてしまうくらいのめり込みました。
それぐらい脚本もキアヌ・リーブスの演技も素晴らしかったです(ぼくはキアヌのファンなので、参考にならないかもしれないとだけは言っておきます)。

それでも大きな欠点と言ったのはなぜか?

それは、ジョニーとの関係性の構築がほぼ全てメインストーリー外に丸投げされているからです(これはジョニーだけではなく、サポートキャラ全てに言えることですが)。

メインストーリーだけを突っ走って進めた場合、「あれ?いつの間にそんな仲良くなったんだっけ?」という違和感だけが募っていくと思います。
これは多分、開発途中からジョニーの役割が大きくなったことと無関係ではないでしょう。

エンディングにも大きく関わることなので、サイドクエストはきっちりやりながらストーリーを進めることをおすすめしておきます。

最低で最高のクソ野郎ジョニーはもちろんのこと、パナムやジュディ、ゴロウといったサポートキャラがとても魅力的。
『ゴースト・オブ・ツシマ』のように、各キャラごとにボリュームたっぷりの独立したストーリーラインが用意されていて、どれもクオリティが高く楽しめました。

特定のキャラとはロマンスも用意されていますが、恋人になったあとにそのキャラに話しかけても、親密な会話だけで終わってしまうのは残念でした(『アサクリ ヴァルハラ』では、恋人とともに時間を過ごすことができました)。

メインストーリーとは全く関係のないサイドストーリーも非常に充実しています。
自我が目覚め分裂したAIタクシー、前市長の死亡事故の調査を依頼してくる市長候補者、少年少女を狙った誘拐犯を追う警官、改心した死刑囚などなど、テイストが大きく違う様々なものが用意されており、どれもこれも印象に残りました。
サイドストーリーのほとんどが印象に残るというのは驚異的なことだと思います。

ただ、もやもやしたまま中途半端に終わってしまうものがちらほらあったのは気になりました。

不満に思ったポイント

メインストーリーの設定とオープンワールドとの相性の悪さ

メインストーリー上では、「Relic」に身も心も次第に浸食されていくという設定になっているのですが、延々と回り道をしてもストーリーの進行には一切支障がないことに違和感を感じました。

時間に追われて世界を堪能できないというのも困るので、設定を見直すなり、一定期限内に最終分岐点に到達することでしか見られないエンディングを用意するなりした方がよかったんじゃないかと思いました。

ストーリーが急ぎ足に感じられてしまう

『ウィッチャー3』は最後までプレイしてもらえなかったからストーリーは短くしたとのことでしたが、本当に短いです。
メインストーリーだけを進めれば、だいたい15~20時間程度でクリアできるぐらいの短さ。

選択肢による大きな分岐は最終クエストのみで、そこまではあっけないぐらいトントン拍子で話が進んでいってしまいます。

サイドストーリーを含めればかなりの分量なのですが、メインストーリーだけで言えば物足りなさを感じました。

世界設定・背景があまり活かされていない

この世界には大企業やギャングなど様々な組織が存在するのですが、ストーリーにはほとんど絡んできません。

大きな役割を果たすのは「アラサカ」というナイトシティを支配している大企業だけで、他の組織とはちょっと戦うことがあるぐらいです。
ストーリーで特定の組織と対立するような選択をとった場合でも、ごく一部を除いてその後のゲームプレイに影響があるわけでもないのは非常に残念でした。

また、各地区にはそれぞれフィクサーがいますが、これまた組織と同じでストーリー上ではほとんど関わることが無く、ワカコとローグ以外は記憶に残りませんでした。

作り込まれたナイトシティ

美しくも汚いサイバーパンクな大都市を散策できる、これだけでわりと満足!
と言えるぐらいに、本作の舞台「ナイトシティ」は凄まじい出来栄え

高層ビルが立ち並ぶエリアから、未来感が全く感じられないスラム街、荒れ果てたレジャー施設など、地区によってガラリと表情を変える街並み、街を彩る様々な看板やCM、路地裏のゴミに至るまで、これでもか!というほど作り込まれており、情報量が多くて圧倒されます。

いい感じの写真を撮るために何度も何度もフォトモードを起動してしまうほど、CS版であっても景観は美しいです。

普段はクエストの開始地点が遠いとファストトラベルを使うことが多いのですが、本作では街を眺めながらドライブしたり徒歩で散策したりするのが本当に楽しく、ファストトラベルを全く使いませんでした。

なんてことのない路地裏にはユニークアイテムを持った死体が転がっていたり、なにか事件があったことを匂わせるチャットログが落ちていたり、街を練り歩くと何かしらの発見があります。

ここまでの密度で構築されたオープンワールドは今までに見たことがありません。

不満に思ったポイント

インタラクティブ性の低さ

ナイトシティにはそこかしこに怪しげな店があるのですが、実際に買い物が出来る場所は限られていて、買い物をするときもただメニュー画面が表示されるだけなのでなんだか味気ないです。

店でご飯を食べたり、バーで酒を飲んだり、コンビニ強盗をしたりといったことはできませんし、グウェントのようなミニゲームも存在しませんし、バーに置いてあるアーケードマシンでは遊べません。

この世界には、ブレインダンス(BD)という未来のVRがあります。
記録した人物の経験を感情や五感も込みで追体験できるというもので、一部のクエストではこれを使って調査を行うことがあります。
BDはいかがわしい商売目的で使われることも多く、ゲーム内で買うことが出来るのですが、買ったものを実際に見ることはできません。

ないものねだりというのは重々承知の上ですが、ナイトシティがよく作り込まれている素晴らしい舞台であるが故に、あれもできないこれもできないという不満が湧き出てきてしまいます。

生活感の欠如

昼夜のサイクルを含めNPCの行動がシミュレートされていた『RDR2』と比べると、街の実態はかなり空虚。

24時間ずっと同じ場所に居続けている人や、一通り会話をした後にぼーっと突っ立っている二人組、全く同じ場所で何度も発生する警察とギャングの撃ち合いなど、観察すればするほど違和感がにじみ出てきます。

ナイトシティという街自体は狂気じみた作り込みなのですが、そこで暮らす人々を見ていくと作りが粗く、そのギャップの激しさのせいで現実に引き戻されてしまいます。

指名手配システム

本作で酷いと感じたのが指名手配システム。

犯罪行為を行うと警察に指名手配されるのですが、警察はパトカーで急行してくるわけではなく、プレイヤーの死角に突然ワープしてくるというトンデモ仕様。
人里離れた荒野であっても一瞬にして駆けつけてくるとは、さすが未来の警察です。

指名手配される条件が曖昧で、犯罪行為を止めるために遠くからギャングをスナイプするとギャングと警察から挟み撃ちにされるのに、屋台でのんびりしているギャングをぶち殺してもお咎めなしだったりします。

応戦して警察を倒すとどんどん指名手配レベルが上っていき、どこからともなくワープしてきた大量の警察にフクロにされてしまいますが、追跡の手はヌルいので少し走れば逃げ切れてしまいます。
しかも警察はパトカーを一切使わないので、カーチェイスは発生しません(ただ、本作の車の操作性には難があるので、カーチェイスがなくてよかったとも思ってしまいます)。

また、指名手配されても指名手配レベルが上昇してもその後に何かあるわけでもなく、逃げ切ったら指名手配は無かったことになります。

カーチェイスが発生する『GTA』や善人プレイを促すシステムとしても機能していた『RDR2』と比べ、これを果たしてシステムと呼んでいいのだろうかと思うレベルで酷いです。

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