
上海に拠点を置くデベロッパー「Pixpil」が手がけた『イーストワード(Eastward)』の感想をお届けします。
ジャンル | アクション・アドベンチャー |
開発元 | Pixpil |
発売元 | Chucklefish |
総プレイ時間 | 22時間 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
使用ハード | Nintendo Switch |
イーストワードとは
MOTHERライクなピクセルアート、ゼルダライクなゲームプレイが特徴の2Dアクションアドベンチャー。
フライパンや爆弾を使う無口な男「ジョン」と、敵の動きを止める光の弾を撃つ天真爛漫な少女「珊」を切り替えながら、敵を倒したりパズルを解いたりします。
公式ではアクションRPGというジャンル分けのようですが、レベルアップ等の成長要素は特にないです。
イイと思ったところ
雰囲気
ピクセルアート、UIデザイン、サントラ。
ゲーム世界を構成するすべての要素がとにかくイイです。
ぶっちゃけ本作の魅力の8割ぐらいはここに集約されている気がします。
特筆すべきは、細部に至るまで狂気じみた描き込みがなされているピクセルアート。
炭鉱、農村、昭和の日本風な町、などなど様々なエリアを訪れることができ、見ているだけでも楽しめます。
キャラの表情が驚くほど豊かで、主要キャラだけでなくモブの一人一人に個性があり、それぞれ固有のアニメーションで生き生きと動いたり喋ったりするだけでなく、会話の内容が物語の進行に合わせて細かく変化します。
いちいちモブに話しかけて回ったゲームは初めてかもしれないです。
次はどんな街・人々・ダンジョンが待ち受けているのか、ストーリーよりも見た目の部分でのワクワク感がすごかったです。
Kakehashi Gamesによる翻訳も、「これは和ゲーです」と言われても違和感がないぐらい。
雰囲気を崩さないフォント、キャラの個性を反映した台詞回し、スラングなど、完成度が非常に高かったです。
探索要素
基本的には一本道進行ですが、エリア内にはいたるところに隠し通路、隠し宝箱が配置されています。
宝箱には、ジョンの武器のアップグレードに必要なパーツ、HP上限アップのアイテムなどが入っています。

珊の新しい能力(バリア、回復)はストーリー上で必ず手に入るものではなく、寄り道してパズルを解かないといけません。
またアイコンがないのでスルーしてしまう人もいそうですが、ダム城ではサブクエスト的なものもひっそりと配置されていました。

明示されない回収要素がたくさんあり、探索意欲を掻き立てられました。
”ミニ”どころではないミニゲーム
ゲーム内では「大地の子」というミニゲームが遊べるのですが、これがミニどころではないボリュームとクオリティ。
プレイ毎にキャラが覚える「わざ」が変わったり、ショップで買えるアイテムが異なったりする、ローグライク風味のドラクエといった感じのゲームです。
ゲーム画面だけでなくゲーム内説明書までこだわって作ってあります。
1プレイには制限時間があり、ゲーム内で7日が経過すると強制的にラスボス戦へと突入。
一度仲間にしたキャラと起動したワープ地点は次のゲーム以降も引き継がれるので、繰り返しプレイして効率的にレベルアップしていけるルートを模索しながらクリアを目指します。
ゲーム本編で手に入れたトークンを使ってガチャを引くと、「大地の子」内で使えるアイテムが増えていくという要素もあり。
なかなか良くで出来ていて面白く、もしかしたらスタンドアロンのゲームとしてブラッシュアップして発売されるかもしれないぐらいのポテンシャルを感じました。
ちなみに総プレイ時間22時間のうち、5時間をこのミニゲームに費やしてました(2周目はまだクリア出来ていません…)。

会話言語の設定
ほかのゲームでは見たことがない設定で、キャラがしゃべる吹き出しの言語とは別に字幕を付けられます。

例えば吹き出しの中身は英語にして下に日本語の字幕といったように、二カ国語を同時に表示させることが可能なので、言語学習に使えなくもないです。
どちらとも言えないところ
ゲームプレイ
ずば抜けた魅力を持つビジュアルとは反対に、ゲームプレイは平凡。
2人を適宜切り替えながら進めていくパズル部分と、ちょこっと挟み込まれるミニゲーム部分(バッティングや川下り)は楽しめましたが、戦闘部分は以下の理由であまり楽しめませんでした。
道中では様々な敵が出現するのですが、倒してもお金や食材がドロップする確率がかなり低いので、戦う意義がほぼ皆無。
アクションの手応え、敵の種類の豊富さはイイのですが、途中から敵が固くなっていくので、だんだん邪魔な作業のように思えてくるのが残念。
実際、スルーできるところはスルーして進むようになってしまいました。
各ダンジョンがちょい長めでストーリーの進行が停滞する感じがあったので、個人的にはダンジョンでの戦闘はボス戦のみ、あとはパズルだけでも良かったかなと思いました。
あと、パズル・ボス戦ともにヒントが特にないので、この手のゲームにある程度慣れてないとキツい箇所がある気がしました。
イマイチと思ったところ
物語の展開
行く先々で事件に巻き込まれその都度解決しながら話が進んでいくのですが、「魔王を倒す」「姫を救う」みたいな分かりやすい大目的が提示されないので、その場その場でお使いじみたサブクエストをこなしているだけという気がしてこなくもないです。
概ね楽しめましたが、展開が性急すぎたり最後まで全く説明されない謎があったりという部分も気になりました。
テンポ感
イベントシーンや重要アイテムの入手シーン、強制戦闘の勝利シーン、未発見レシピの料理シーン、「大地の子」のイントロシーン、ガチャガチャのシーンなど、スキップできないシーンが盛りだくさん。
あっちこっちパシられて行ったりきたりを繰り返す展開が多く、冗長に感じられてしまうこともしばしばありました。
アクション面での仕様
回避アクションが無いわりに敵の攻撃スピードが速い、操作キャラじゃないもう片方のキャラにも当たり判定がある、攻撃時には足が止まる、攻撃は進行方向にしか出せない、といったアクション面でのいくつかの仕様が気になりました。
料理やアイテムによる回復は戦闘中でもでき、やられても直前から再スタートなので難易度が高いというわけではありませんが、ちょっとしたフラストレーションが蓄積していく感じでした。
取りこぼした要素は後で回収できない
これが個人的に一番イマイチだと感じた点。
本作にはファストトラベルやチャプターセレクトのようなものはなく、各エリアで引き返せないポイントを通過してしまうと、取りこぼしてしまった要素は回収することが出来なくなります(一応ロードしてやり直すことは可能)。
- 引き返せないポイントがどこなのかは分からない
- 手動セーブスロットは2個だけなのでやり直せないケースもある
- そもそも取りこぼしがあるのかどうかすらも分からない
という仕様なので、全部回収するぞ!という意気込みでプレイするとたぶんダレます。
かといって二周目で攻略見ながらコンプするぞと思っても、引き継ぎ要素はないしスキップ機能もないのでやはりダレます。
あと、最後までプレイしたのに操作説明で5つほど?????のままになってる項目があってモヤモヤします。
おわり
兎にも角にもピクセルアートが素晴らしく、雰囲気作りに極振りしたゲームという印象。
ゲームプレイ部分も悪くはないですが、ちょっと面白味に欠けるかな~と思ってしまいました。
ピクセルアート大好き人間には超オススメです。

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