『ブライト』 リアルとファンタジーが融合したバディ・ムービー

Will Smith and Joel Edgerton in Bright (2017)

原題:Bright
監督:デビッド・エアー
出演:ウィル・スミス、ジョエル・エドガートン、ノオミ・ラパス、など
上映時間:1時間57分
公開年:2017年

デビッド・エアー監督が得意とするLAを舞台とした警察ものっぽいし、Netflix作品は監督のクリエイティビティが尊重されてわりと好き勝手出来る、みたいな話も聞くので(残念だった監督の前作『スーサイド・スクワッド』は上の意向でズタズタに編集し直されたらしい)、これは期待できそうだぞと思っていたわけですが…

どんな映画?

舞台は人間やオーク、エルフなど9つの種族が暮らしているLAの街。
人間のダリル・ウォード(ウィル・スミス)とオークのニック・ジャコビー(ジョエル・エドガートン)の警官コンビが、ひょんなことから魔法の「ワンド」を手に入れてしまったことから、「ワンド」を巡る戦いに巻き込まれてしまう…というお話。

『フェイクシティ』や『エンド・オブ・ウォッチ』と『ロード・オブ・ザ・リング』と『ズートピア』を合わせたような映画だな、と思いました。
要は、監督お得意のLAでのリアルな警察ものに、『ロード・オブ・ザ・リング』のような歴史・種族構成・ファンタジー要素で味付けをして、『ズートピア』のように現実世界における差別や偏見などを落とし込んだ作品、といった感じです。
そういえば『エンド・オブ・ウォッチ』も『ズートピア』も本作と同じく警察のバディものですね。

感想

独自の専門用語や設定に関する情報量が多くて、1回観ただけで全て理解するのは難しい映画だと思います。
ちなみに僕は1回目は普通に観て、2回目は一時停止しつつ情報を整理しながら観ました。

アバンタイトルで建物に描かれたグラフィティによってこの世界の歴史や種族間の関係性を簡単に見せていくところや、警察署に向かう途中やパトロールのシーンで、バシッとこの世界の実在感、奥行きが感じられるようになっていたのはすごくよかったです。
架空の世界を舞台にした作品においていちばん重要なのは、その世界が本当に実在していると感じられるかどうかだと思うのですが、この映画はそこをしっかりクリアしてきて、序盤からかなり期待が高まります。

この世界にはどうやら9種族が共存しているらしいのですが、僕が劇中で確認できたのは、人間、オーク、エルフ、フェアリー、ケンタウルス、ドワーフ、ドラゴンの7種類で、他の2種類がなんだったのかは分かりませんでした。
もしかしたら見逃しているだけかもしれませんが。
オークは2000年も前のことが原因で未だに差別されており、清掃員や運転手などこき使われるような職業についていたり、警察から不当な暴力を振るわれています。
オークに対する差別は酷いですが、フェアリーは虫けらのように扱われている、というのも可哀想でした。

『ズートピア』のように現実世界における差別や偏見などを落とし込んでいる、と書きましたが、『ズートピア』と違ってこの映画では描き方がちょっと浅いんですよね。
確かに、ジャコビーに対する差別は前半部分でよく描かれています。
彼は警察署では唯一のオークとして差別の対象になっていますし、純血ではないので同族からも疎まれる存在として描かれています。
警察の同僚から、同族をわざと取り逃がす、なんてことを影で言われていたりしています。
しかし、偏見や差別は表面的には描かれているものの、本筋とはあまり関係ない要素になってしまっているんです。
ジャコビーに対する周りの認識が変わるのが、彼の自発的な行動によってというより、たまたま〇〇だったから、みたいな運要素によるものが大きい、というのが問題でしょう。
メッセージとして一応は描いているけどそこにはあまり興味がなくて、結局はウィル・スミスが活躍するだけのアクションファンタジーになってしまっている、というのが今作の残念なところのひとつです。

また、話運びにも難があります。
2人が「ワンド」を手に入れてからは、「ワンド」を狙うギャングやエルフ達との戦いが繰り広げられるわけですが、基本的に、逃げる→敵が来る→応戦する→逃げる、の繰り返しです。
逃げ方になにかロジックがあるわけでもなく、場当たり的に逃げ込んで周囲に迷惑をかけたり捕まったりするだけですし、起こっていることはファンタジーでもなんでもない銃の撃ち合いなので、この映画ならではの面白味がありませんでした(インファーニの3人が出てくるアクションシーンはアクロバティックな動きも相まってかっこよかったです)。

デビッド・エアー監督に期待するのは当然ゴア描写。
しかしこの映画、ゴア描写は殆ど無いです。
魔法によって腕がちぎれるとか、体に穴があくとか、とにかく容赦のないバイオレンスな描写を期待していたので、ちょっと拍子抜けでした。

また、ウォードとジャコビーの掛け合いというバディものとしての面白みが薄いのも残念。

ネタバレ感想

専門用語や設定が多すぎ語りすぎ

一番最初に、「ブライトのみがワンドの力を制御できる」というこの映画の肝である設定が提示されます。
ウィル・スミス主演の映画なので、どうせウィル・スミスがブライトなんだろうな、と思ってしまいますし、それが覆ることはありません。
これは失敗でしょう。
さらにこの設定は、なぜか途中で再度説明してくるので二度手間です。

と言うかこの映画、設定をなんでもかんでも言葉だけで説明しすぎです。
途中で設定をまとめて説明してくるくだりがあって、情報を無理やり処理しなければならないので疲れます。

連邦捜査局の魔法特殊部隊の二人がサーリング(剣をブン回してたホームレスみたいな人)に尋問するシーンで、専門用語が次々と出てきて説明が行われるのですが、まだそれらが映画に現れていない内から言葉だけで説明されても非常に飲み込みにくいですし、そもそも情報量が急に増えすぎです。

  • エルフの中には、「インファーニ」と呼ばれるダーク・ロード信奉者の組織があって、「ワンド」の力で密かにダーク・ロードの復活を企てている。
  • 「インファーニ」やダーク・ロードに対抗する「光の盾」という組織がある。
  • ワンドを3つ揃えるとダークロードを復活させることができる。
  • ブライトはほとんどがエルフだが、人間の中にも百万人に1人の確率で存在する。
  • ブライトだけが「ワンド」を制御でき、それ以外のものが素手で触ると爆発する。
  • 魔法特殊部隊なる機関が存在し、「ワンド」などの魔法の存在を取り締まっている。
  • 「インファーニ」のリーダーであるレイラから、ティッカが「ワンド」を奪った。

以上のことが一気に説明されます。
これらの情報は、ストーリーを進めていく中で徐々に明らかにしていけばいいものですし、ここに出てくる3人はそもそも本筋にほとんど絡まないので(サーリングなんてこれ以降出てきません)、ルールを説明するだけで物語を停滞させるシーンになってしまっています。
このシーンは丸々カットした方がよかったのではと思いました。
魔法特殊部隊の2人は、ワンドが目撃された現場に急行したところが初登場でよかったですし、サーリングはそもそも今回登場させなくても問題はありませんでした。

また世界設定に対する疑問として、途中で「シュレック似の~」という台詞が出てくるのですが、そもそもおとぎ話チックな世界で『シュレック』のような映画が作られるというのは考えにくいかな、と思いました。

話運びが雑すぎ

ウォードとジャコビーがワンドを持つティッカに遭遇してからは、ワンド争奪戦が繰り広げられていくわけですが、展開のさせ方が雑すぎます。
ウォード達がどこに逃げようが、制服を脱いで普通の服に着替えようが、敵は速攻で居場所を探し当てて襲撃してきます。
実はワンド探知機的なものがあるのかも、と思って観ていたのですが、そういった理由付けは一切なかったので意味が分かりませんでした(ガソスタ襲撃だけは電話から居場所が割れる、という理由付けがありましたが)。

そもそも、ワンドを制御できるのはブライトのみ、という説明があったにも関わらず、警察、アルタミラギャング、オーク達がこぞってワンドを手に入れようとする、ってのはちょっとおかしくありませんか?
しかも、ワンドを使うには呪文を知っていないと使えない、という設定が後で明らかになるため、ますますこの人達は何でこんなにワンドをほしがっているのかが分からなくなってしまいました。
自分がブライトかどうかを判別するには素手で触ってみるしかなさそうなので、正直リスクがエグいですよね。命がけの宝くじといった感じ。
インファーニにはブライトかどうかを判別する儀式的なものがあるんでしょうか。

おわり

全体的に、脚本がとっちらかっていた印象。
世界観や設定、ビジュアルなど、ワクワクさせてくれる要素はありましたが、それらの魅力を引き出せていない、なんだかすごく惜しい作品でした。
今作で一通りの設定やキャラの導入がすんだので、次回作(が作られるとすれば)ではもうちょっと面白くなるのではと思います。

個人的にはNetflixなんだし、映画でのシリーズ化よりもドラマでじっくり描いていく方があってたんじゃないのかな、と思いました。

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