『悪女/AKUJO』 超絶カメラワーク血みどろアクション

 

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原題:The Villainess
監督:チョン・ビョンギル
出演:キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、ほか
上映時間:2時間4分
公開年:2018年

バイオレンス描写には定評のある韓国映画から、また凄いアクション映画が誕生。
監督は『殺人の告白』のチョン・ビョンギル。

以下、ネタバレがありますのでご注意を。

のっけからいきなり一人称視点でのドンパチが始まります。
ここでテンションがガン上がり。なんですが、ちょっと不満も。
全編一人称視点だった快作『ハードコア』を観たからでしょうか。
どうもこう、アイデアと勢いが足りないと感じてしまいました。僕の感覚がおかしいだけかもしれませんが。
あと、一人称視点であるが故の不自然さ、というのが露骨なのも気になりました。
どういうことかというと、普通の三人称視点のアクションシーンの場合、主人公が敵に囲まれた状況で視界の外からの攻撃、というのが当たり前に起こります。
主人公が把握できなくても、観客は三人称視点で観ているので攻撃を把握できるので全く問題ありません。
しかし一人称視点の場合、主人公の視点=観客の観ている映像なので、視界外からの攻撃を受けた場合、観ているだけでは何が起きたのかよく分かりません。なので、視界内にいる敵との攻防ばかりにならざるを得ません。
『ハードコア』では、アクションシーンを直線的な状況下にする、後ろからの銃撃が目の前の人に当たって気付く、などの工夫がなされていましたが、今作ではそういった工夫がありませんでした。
敵に囲まれている状況なのに視界外の敵は全く攻撃をしてこない、というゲームのような不自然さが際だってしまって、せっかくアクションはすごいのに、ちょっと冷めてしまいました。
三人称視点に切り替わる時の演出はすごくよかったと思いますが、そもそも一人称視点である必要があったのだろうか?という感じもしてしまいました。

今作では、『キングスマン』や『アトミック・ブロンド』など最近のアクション映画でよくみられる長回し風のアクションシーンがあります。
アクション自体のクオリティは凄まじく文句なしなんですが、他の映画と比べてカットのつなぎ目が分かりやすすぎるというか、ちょっと不自然な感じすらする、というのが残念でした。
とくにドアを開けて部屋を移動する、というの場面が何カ所もあるのですが、そこの繋ぎがかなり不自然だと感じました。

今作のストーリーは、だいたい『キル・ビル』と『ニキータ』。
父親を殺した人物への復讐と、政府のもとで行う暗殺稼業の2軸で構成されています。
シンプルな話のはずなんですが、回想の時系列が無駄にぐちゃぐちゃなので、主人公スクヒを含めた登場人物の過去や関係を整理するのにちょっと苦労しました。
個人的に、回想は警察に捕まってから国家情報院の施設で目覚めるまでの間に、ちゃんと時系列順にしてすませておくべきだったんじゃないかな、と思います。
死んだはずの夫が標的として現れるのですが、こっちとしてはさっきまで回想に出てきていた人なので、えっ!?生きてたんだ!?という衝撃がかなり薄いんですよね(まあ予告編で見せちゃってるのでそもそも衝撃を与えることを意識してないっぽいですが)。

タイトルは『悪女』ですが、描かれているのは”悪い女”というより”悪い男に騙されていた女”なので、このタイトルはちょっと違うんじゃないかなと。

途中、スクヒとヒョンスが関係を深めていく様子が、僕が全く興味のない韓流メロドラマみたいな感じで結構な尺を使って描かれることになります。
終盤までは、まあこういうプロットなら必要だったよね。ぐらいのテンションだったのですが、ラストでスクヒが下す決断というか、そこに至るくだりを観て、じゃああんなに尺を使ってメロドラマ描写をする必要はなかったじゃないか!と思ってしまいました。
ここはがっつりネタバレなので、気になる人は反転してどうぞ↓

スクヒがトドメをさせないでいると、ジュンサンが口笛を吹く。
その口笛は、スクヒの父親が殺されたときに聞こえてきたもの、つまりジュンサンが父親を殺した犯人だった。
それに気づいてしまったスクヒは、斧を振り下ろしジュンサンを殺した。

最終的にスクヒは父親の復讐を果たすわけですが、だったら娘だのヒョンスだのはいらなくね?と思うわけです。
というか、娘とヒョンスをしっかり描いているのだから、父親を殺したのはおじさんだと知っても殺せない、だけど2人を殺したことは許せない、という流れにするのが自然だと思うんですが(よくわからなかったけど、娘は死んだよね?)。

あと、ビルで対決するときにジュンサンは「お前の父親を殺した罪悪感から、お前を深くは愛せなかった」と言ってるんですよね。
口笛の前に既に父親殺しの犯人がわかってる。
こういう展開にするなら、メロドラマ部分は全くいらなかったんじゃないかと思ったわけです。

結局、ジュンサンとヒョンスの会話の内容は何だったのか分からずじまいだった、というのも何だかなあ、という感じでした。(実は娘はジュンサンとの子じゃなかったのかな?あとあそこで口笛を流す意図もよく分からなかった)

↑ネタバレここまで。

なんというか、凄く惜しい、もったいない映画でした。
アクションはかなり凄いのですが、ちょっと話運びに難があるかな、と感じました。
観るのであれば、予告編や公式であがっている本編映像は一切観ない方がいいです。

なんだか文句みたいになってしまいましたが、話題になっていたバイクチェイスのシーンはカメラワークが凄かったですし、クライマックスの車で追いかけてバスに乗り移るシーン、からの怒涛のアクションもめちゃくちゃ凄かったです。

アクションシーンは総じて一見の価値アリ、というかアクションシーンだけは後何回か見直したいぐらいのクオリティだったので、元は取れたかな、という感じでした。

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