『FF7 リメイク』の評価・感想。バトルは面白いけどあとは…

今回は、『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』のクリアレビューをお届けします。

FFシリーズは、1と2とオンラインタイトル以外のナンバリングは全てプレイ。
タクティクスやクライシスコア、ディシディア、零式といったスピンオフもそこそこプレイしています。
一番好きなのは12かタクティクス。
シリーズファンと言ってもいいぐらいにはプレイしていますが、13以降のFFにはあまりいい印象を持っていません。
『FF7』はインターナショナル版をプレイ済みですが、細かいことはあまり覚えていません。
そんな人のレビューだと思ってお付き合いください。

まず最初に、これだけは書いておかなければなりません。
本作に「オリジナルに忠実なリメイク」を期待していると、最後の最後でがっかりすると思います。
プレイするにはそれ相応の覚悟が必要です。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、リメイクというよりもリブート、パラレルに近いと思っておいたほうが、精神衛生上よろしいかと思います。

ストーリー&キャラ

クラウドやバレットなどの主要キャラはもちろん、ぼくの記憶には全くに残っていなかったジェシー、ビッグス、ウェッジといったアバランチのメンバー、そしてミッドガルの街そのものが、現代のグラフィックで蘇り、掘り下げて描かれているというのは素直に良い点でしょう。

最初はクール気取りのあんちゃんという印象だったクラウドは、心根が優しい純朴な青年であることが分かってきますし、ただただやかましいだけだったバレットも、タフガイであることの自覚と責任を持った熱い漢であることが分かってきます。
マップを歩いている最中やバトルが終わった後の掛け合いで、互いに対する信頼度の高まりを表現している点も非常に良かったです。

ただの通過点に過ぎない上層の街は非常に細かく描写されており、その直後に訪れることになるスラムとの生活水準の差が、ひと目で分かります。
街でモブとすれ違うときには、バリエーション豊かな井戸端会議を聞くこともでき、作り込まれているところはかなり作り込まれています。

オリジナルで非常に印象的だったウォールマーケットとクラウドの女装イベントは、本作の大きな見どころでしょう。
クラウド、ティファ、エアリスにはそれぞれに3つずつ衣装が用意されており、力の入りようが違います。

リメイクにあたって、オリジナルからは大きく変更・追加されている部分もあります。
アバランチのテロ行為が神羅のプロパガンダに利用されてしまうというのは、理にかなった良い改変ポイントでしょう。
これによって、巨大企業の重要な施設をたかだか数人で爆破できてしまうという都合の良すぎるストーリーが、しっかり納得できるようになっています。

反対に、ローチェやキリエといった新キャラは、追加する必要があったのか疑問に思うほど、上手く機能していませんでした。

本作は、オリジナルでは起承転結の「起」にあたる、オープニングからミッドガル脱出に至るまでの部分を、掘り下げるなり新たな要素を追加するなりして起承転結にし直したものです。
オリジナルではミッドガルを脱出してからが本番であり、本作で描かれている部分は壮大な前フリ、いわば長めのチュートリアルのような部分でした。

そこを拡大解釈して引き伸ばした結果、どうにも盛り上がりどころに欠ける、スローペースでぼやけた物語が出来上がってしまっています。

女性キャラとイチャイチャして、神羅との小競り合いを繰り返しているうちになんとなく終盤に差し掛かり、それまでメインの悪役として描かれていた神羅は隅に追いやられ、素性も目的もよくわからないラスボスと戦うことになります。
そしてラスボスを倒すと、世界の命運を左右する戦いがこれから始まるっぽい…という、打ち切り漫画のような不完全燃焼な形で物語は幕を閉じます。

ベースとなっている話がそうなのだから仕方がないことなのですが、一本のゲームとして見た場合、満足度は決して高くないというのが正直なところです。
完結作を謳っていたのに、結局キレイに完結してない作品よりはマシですが…

また、表現がリアルになったことで、違和感が増してしまっている部分も多いです。
現実世界と同じような服装で暮らしている人が多い中、身の丈ほどもある大剣を背負った成人男性が街を練り歩いている様はかなりシュール。
厳戒態勢が敷かれている神羅ビルの中を、右腕が銃になっている巨漢が堂々と走り回り、神羅の社員は全くリアクションしないというのも明らかにおかしいです。

神羅の幹部がリーブを除けば揃いも揃って記号的な悪役で、「ゲヘヘへ悪い会社だぞ~悪いことするぞ~」と会議をしている場面はひどく滑稽ですし、”運命”とやらが介入して死ぬ人は死ぬし死なない人は絶対に死なないせいで、本作で描かれている人の死は全て茶番に思えてしまいます。
プレートの崩落という極悪非道な所業が行われるものの、崩落によって死んでいく人々や、実際にどれだけの人が死んだのかといった描写が無いに等しいので、世界を救うために戦うという主題がなんとも薄っぺらく感じられてしまいます。

バレットたちは善で神羅は悪という一面的な描き方をしているのも気になりました。
「魔晄は星の命。星を救うことがひいては人類を救う。星の命を奪う神羅は悪」という主張が本当に正しいのか、プレイヤーは疑問を持ってはいけません。
主人公サイドは常に善であり、悪役っぽい神羅は悪役なのです。善による行為で生じた被害は必要な犠牲であり、悪による搾取は許されざる罪なのです。
主人公サイドに責任を負わせたくないというのは、魔晄炉爆破による被害が全て神羅のせいになっているという点で明らかに感じます。

これでは、ガワがリアルになった分、ストーリーをリアルに感じることが出来ません。
必要のない新キャラを付け加えるのではなく、多面的な掘り下げを行ってもらいたかったです。

終盤には、「リメイク」というタイトルからは想像できない、大きすぎる改変がプレイヤーを待っています。
制作サイドは、結末が分かりきっている話をただそのまま作り直したんじゃ面白くない、と思ったのでしょう。

その意図は分かりますが、であればタイトルに「リメイク」と付けるのは間違いだったのではないかと思います。
「リブート」だとか「リ・イマジネーション」だとか、「新約FF7」だとか、とにかく「オリジナルと同じようで全く違うゲームですよ」ということを打ち出すべきだったのではないでしょうか。

最初に「オリジナルの忠実なリメイクを求めているとがっかりする」と書きましたが、では本作がオリジナルをやったことがないプレイヤー向けに作られているのか?というと全くそんな事はありません。
とくにエンディングは、オリジナルもクライシスコアもプレイしていない人にとって、「急に出てきたこいつは一体誰なんだよ」と思ってしまうような意味不明なものになっています。

次回作以降がどのようなストーリーになるかは分かりませんが(そう、次回作がオリジナルと同じ展開にならない可能性も十二分にあるのです)、制作サイドの自己満足の代物になってしまわないことを祈ります。

リニアなゲーム展開

「現代の技術でミッドガルを再構築します!」と聞いたときには、てっきり上層と下層がある程度の広さを持った箱庭になっていて、メインストーリーを進める傍らでいろいろなところを探索できるものだと、勝手に想像していました。

個人的に、チャプター1からチャプター7まではワクワクしていました。
魔晄炉に上層、スラム、地下鉄と、現代に蘇ったミッドガルを歩きながら、まだ前半だしこれから世界が広がるのだろうという期待を持っていました。

残念なことに、それ以降では細い道とちょっとだけ広い戦闘エリアをつなぎ、面白みのないギミックをちょこちょこ配置しただけの一本道をひたすら進んでいくことになります。
スラムやウォールマーケットも細い道をつないだだけの狭いマップでしかなく、『FF10』や『FF13』から特に進歩が見られません。

『ライトニングリターンズ』で改善されたと思ったのに、なぜ逆戻りしてしまったのでしょうか。
オリジナルもミッドガルの部分はリニアでしたが、それを現代のゲームとして満足が行くよう再構築するのが「リメイク」なのでは?と思わずにはいられません。

しかし皮肉なことに、ぼくが面白さを感じたのは、究極の一本道である神羅ビルの非常階段でした。
3階から59階まで、まさか本当に階段が用意されているとは思いませんでしたし、そこで繰り広げられる会話で思わず笑ってしまいました。

リニアというのは、一本道なマップ構造もそうですし、プレイヤーの行動に自由がないという点もそうです。
自由時間があってサイドクエストが発生するのは特定のチャプターの特定のポイントだけで、他のエリアを自由に行ったり来たりは終盤の手前まで出来ません。

サイドクエストはいわば時限イベント扱いで、ストーリーを先に進めてしまうと、ゲームを一度クリアするまで回収することが出来ません。
「ストーリーの進行を妨げないようにした」といえば聞こえは良いですが、今は先が気になるから後でやろう、という自由度はありません。

サイドクエストはなんの工夫もない単調なお使いですが、クリアすることによって報酬が得られるだけでなく、新しいイベントが発生するというのは良いと思いました。

ダーツやスクワット、クラッシュボックスといったミニゲームもいくつかありますが、やはりこれらも特定のタイミングでしかプレイできず、冒険の合間にちょっと息抜きという感じで楽しむことが出来ないのが残念でした。

一本道のマップ構造よりも問題だと思ったのが、瓦礫をくぐる・細い通路を渡るといった、移動速度が極端に遅くなるだけの道をやたらと配置しているということ。
敵にバレないようにこっそり脇道を通る、敵の様子を伺いつつ通風孔を通る、というようなシチュエーション込みのものならまだ許せますが、ほとんどがただ無駄に配置されているだけです。

バトルシステム

アクション部分で敵の攻撃を上手く捌きながらATBゲージを貯め、貯まったATBゲージをアビリティ・魔法・アイテムで消費する。
という、リアルタイムアクションとコマンドをかけ合わせた本作のバトルシステムは、よく出来ています。

個人的には、FFシリーズ史上最も面白いバトルシステムだと感じました。

敵の弱点を突いて怯ませ、更に追い打ちをかけることでバースト状態(タコ殴りチャンスタイム)にできるという、弱点・バーストシステムによって、戦略性と爽快感を上手く両立しているのが大きなポイント。
敵によって有効な戦法が異なり、特に巨大なボス戦では弱点攻撃に加えて部位破壊も重要となっているため、戦闘が単調になりにくくなっています。

敵の攻撃をかいくぐりながらATBゲージを貯める、敵の弱点を突く、ATBゲージとHPの残量に気を配る、キャラの固有アクションを使い分ける、といった操作をリアルタイムで行う必要があるため、ボタン連打とポーションがぶ飲み、バフ・デバフをかけながらとにかく殴る、といった工夫もなにもない戦闘とは一線を画す楽しさがあります。

敵の近距離攻撃にカウンターできるクラウド、強力な遠距離攻撃が出来るバレット、バースト状態になった敵の追い打ちに特化したティファ、魔法攻撃を強化できるエアリスと、キャラの差別化がきっちりと図られているのも非常に良いです。
戦闘では自由にキャラの切り替えが行なえるうえに、コマンドの指示も行えるため、リアルタイムながらパーティーが一丸となって戦うコマンドバトル的な雰囲気も味わうことが出来ます。

『龍が如く』の次回作は、本作のシステムを真似したら良いと思います。

一般的なRPGでは、新しく強い武器が手に入ったら古い武器は売り払う、というのがキホン。
しかし今作では、武器それぞれにスキルボードが用意されており、物理攻撃に長ける、魔法攻撃に長けるといった特徴が異なります。
これにマテリアシステムが合わさることによって、誰をどのような役割にするか、どういった戦い方をさせるか、キャラクターカスタマイズとバトルの戦略に幅を持たせています。

本作で特に気に入ったのがこのバトルシステム周りです。
しかし、

  • 攻撃頻度が妙に高く、怯まない敵
  • 対してこちらは簡単に怯み、コマンドを潰されるとMPとATBゲージはちゃっかり消費する
  • 攻撃頻度が異常に低く、ATBゲージを貯めてくれない味方
  • 強力な攻撃を平気で食らいまくる味方
  • 操作キャラにやたらと集まるヘイト
  • 弱点を突くことが大前提のバランス
    そのため、「みやぶる」と4属性魔法マテリアの装備はほぼ必須
  • 当たらないブリザドとエアロ
  • アイテムの使用にもATBゲージを消費するため、困難なリカバリー
  • ボスの体力を減らすと問答無用で発生する演出
    バースト中やリミット技発動中でも発生するため、技の無駄撃ちが頻繁に起こる
  • 短すぎるバースト時間
  • 褒められないカメラワーク
    動きが素早い敵、飛行する敵との戦いはひどい
  • フルパーティーで戦える場面がけっこう少ない
    クラウド1人、もしくは2人パーティーで進まないといけない場面は戦いが窮屈
  • 回避やダウン時に無敵時間がないので、最悪の場合お手玉されて死ぬ
  • 敵の攻撃は食らってみるまでガード出来るかどうかが分からない

といった多くの問題も抱えており、バトルシステムの面白さを十分に引き出すことが出来ていないように思えます。
結果として終盤では、「せんせいこうげき」と「はんいか」を付けたエアリスで開幕に全体魔法を放つ、クラウドでひたすら「反撃の構え」を使うという単調な戦い方が最も効果的でした。

次回作にはこれら問題点の改善に加えて、FF12のガンビットシステムとまでは言いませんが、味方の行動をある程度制御できる仕組みを搭載してもらいたいところです。

おわり

  • キャラクターモデルや一部背景など、力が入っている部分のグラフィック
  • クラウドの女装イベント
  • 戦略性と爽快感を両立させた新しいバトルシステム
  • アレンジが施されたサウンドトラック

  • 力が入っていないところのチープなグラフィック
  • いまいち盛り上がらないストーリー
  • リアルになったことで生じている違和感
  • 薄っぺらい悪役
  • ところどころでイライラさせられるリニアなマップ構造
  • 面白みのないサイドクエスト
  • 調整が不足している戦闘バランス
  • イベントのスキップ時に発生するロード

体験版をプレイしてけっこう期待していて、チャプター7あたりまではかなり楽しめていましたが、クリアしてみると辛口な評価になってしまいました。
クリアにかかった時間は、サイドクエストをほぼ全て消化しても30時間程度で、大作RPGとしてはいささか物足りないボリュームでした。
ボリュームが多ければいいってものではありませんが、ディスク2枚組でこれだけ?という感想になってしまったのは否めません。

本作の発表から発売までに約5年。
オリジナルにある程度沿った展開にするのであれば、次回作は本作以上の規模にしなければなりません。
これがPS4初期の作品であれば楽観視出来ましたが、次回作は次世代機での発売になるでしょうから、さらなるクオリティアップが求められます。
次回作が果たして日の目を見る時が来るのか、今から不安です。

コメント

  1. 匿名 より:

    概ね同意見です。
    ストーリーに関しては完結するまでわかりませんが…正直期待薄ですね。

    個人的な印象として今回のリメイクはFF7の世界観が好きな人ほど評価が低く、”クラウド”や”ティファ”等のキャラクターだけが好きな人ほど評価が高い様な気がします。

    • えむ より:

      コメントありがとうございます。
      キャラ萌え重視みたいな感じはちょっとありましたね。
      続編は期待せずに待つことにします。

  2. 匿名 より:

    読みやすく、またポイントごとに的確な批評をされている文章だと感じました。面白かったです。

    自分も原作うろ覚え状態で開始して全体的に楽しんだのですが、やっぱりクラウド達の服装や髪型だけが現代風のモブ達と比べてリアルにあの頃のままなのは気になってしまいましたね。そういう意味では意外とバレットが一番違和感なく、時代を超越していたかもしれません

    今からでもクラウド達の外見を変えるdlcや、あとは戦闘時の回避にキャンセル機能と多少の無敵時間を付与してくれれば個人的には大満足なのですが、どうなんでしょうね。

    • えむ より:

      コメントありがとうございます。
      そんなことを言ってもらえるとは嬉しいです!

      回避・ガードキャンセルはほしいところですが、調整が難しそうなので次回に持ち越しですかね。