
今回は、ギアーズシリーズ初のストラテジーゲーム『Gears Tactics』のレビューをお送りします。
※PCが最小動作要件ギリギリのスペックなので、スクショが汚いのはご勘弁ください。
Gears Tacticsとは
『Gears Tactics』は、TPSの金字塔である『ギアーズ』シリーズのスピンオフ作品。
ギアーズといえば、アメフト選手のようなガタイをしたおっさん達が超前傾姿勢でカバーからカバーへと移動し、侵略してきた地底人共をちぎっては投げちぎっては投げしていく、スピーディーでバイオレンスなゲームプレイで人気を博したシリーズですが、本作はTPSではなく『XCOM』のようなターンベースストラテジーとなっています。
ストーリー
突如として地下から侵略を始めた謎の種族”ローカスト”により、わずか1日にして人口の約4分の1が死滅。
ローカストを一掃すべく発動された、衛星兵器ドーンハンマーによる殲滅作戦は失敗に終わった。
COGに所属するゲイブ・ディアス軍曹は、ローカストのマッドサイエンティスト、オーコンを追跡し抹殺する任務を課せられる。
兵士も物資も現地調達という無理難題をふっかけられたゲイブと、相棒のシド・レッドバーンは、生き延びたCOG隊員や難民を率いてオーコンを追いつめていく…というお話。
舞台は、初代『Gears of War』の12年前までさかのぼります。
主人公の名前からも察せられる通り、初代の前日譚というよりかは『Gears of War 4』の前日譚という側面が強い内容になっていました(本作の主人公ゲイブは、『4』以降の主要キャラ、ケイトの父)。
ギアーズの世界を異なる視点から拡張するストーリーで、シリーズファンとしては大いに楽しめましたが、まったくの新規プレイヤーが楽しめるかは分かりません。
ゲームプレイ
「スピーディーでダイナミックな戦闘が魅力のギアーズでターンベースストラテジー?」とちょっと不安だったのですが、実際にプレイしてみると、システムは違えどギアーズをプレイしている感覚をしっかり味わえることに驚かされました。

プレイヤーは、俯瞰視点で戦場を見渡しながら最大4人のユニットを動かし、迫りくるローカストの軍勢と戦います。
自分のターンと敵のターンを交互に繰り返しつつ、敵の動きを予測し、カバーポジションからカバーポジションへとユニットを動かし敵を駆逐していくというもので、『XCOM』などのゲームをプレイしたことがあればすぐに手に馴染むシステムです。
本家『ギアーズ』でも『XCOM』でもカバーしつつ戦うという部分は共通してるので、XCOM風のシステムになっても違和感が無いというのは当然のことだったのかもしれません。
ランサーのチェーンソーキル、レトロランサーの突進、ローディーランからのすいつくようなカバー、暴力的な処刑、敵をバラバラにするフラググレネード、といったギアーズの魅力がきちんとターンベースストラテジーの要素として落とし込まれています。

各ユニットにはターン開始時に3つのアクションポイントが与えられ、そのポイントを消費して移動や射撃、スキルといったアクションを行います。
この手のゲームでは、2回行動制かつ、射撃やスキルを使うと行動が終了してしまうのが一般的ですが、本作ではポイントがある限りどのアクションをどの順番でも行っても良いというのが特徴。
マップがグリッド状になっていないので、カバーポジションをのぞけば移動が自由に行えるというのは新鮮です。
反面、1ポイントでどれだけ移動できるのかが分かりにくかったり、グレネードやトルクボウなどの範囲攻撃を使う際にちょっとカーソルがずれるだけでとどめを刺せなかったり、といった欠点もあります。

敵の数はかなり多く、こちらの数倍の数で襲ってくることがほとんど。
さらに、嫌なタイミングと位置で飛んでくる増援や、グレネードで閉じない限り毎ターン敵が出現するEホールへの対処にも頭を悩ませることになります。
登場する敵は、かなり懐かしい顔ぶれです。
レッチとティッカーは体力こそ低いものの、対処を誤ると自陣が一気に瓦解するほどの脅威となるので油断はできません。
ナッシャー片手に突撃してくるグレネーディア、周りのユニットの防御力を強化するカンタス、ブームショットをぶっ放してくるブーマー、死亡時に爆発するディサイプルなど、ローカストにはそれぞれ独自の特徴があります。
敵の組み合わせとポジションを見て臨機応変に戦略を組み立てる必要があり、手応え満点です。

各ユニットにはクラスが設定されており、クラスによって使用する武器・スキルが異なります。
クラスは、支援、前衛、狙撃、重装、斥候の全5種類。
各クラスにはスキルツリーが用意されていて、さらにそのスキルツリーは4つのカテゴリに枝分かれしています。
そのため、同じクラスでも全く異なるビルドを組むことが可能になっています。

キャンペーンは全部で3ACTで、それぞれのACTは複数のチャプターで構成されています。
シリーズの中では最もACT数が少ないものの、一回の戦闘にかかる時間が長く、後述するサイドミッションの問題もあるため、クリアにかかった時間はシリーズ最長でした(ノーマル難易度でクリアに25時間くらい)。
チャプターにはメインミッションとサイドミッションがあり、メインミッションをいくつか進める→サイドミッションを規定数クリアする→メインミッション…という流れ。
ACTの最後には、ギアーズならではの巨大ボスが待ちかまえています。

XCOMとは違い、軍備の拡充やリソース管理といったマネジメント部分はなく、ミッションの合間に行えるのは、新兵のリクルートか装備の調整ぐらい。
良くも悪くも戦闘に特化したゲームとなっているので、リプレイ性・プレイバリューともに少なく感じました。
ストーリーをクリアすると、延々と戦闘を繰り返して装備を集め、最強のギアーズを育てるベテランモードが始まります。

良かったポイント
3ポイント制によるアグレッシブな戦闘
3アクションポイント制度によって、1ターンにできるアクションの選択肢が非常に多く、これまでのターンベースストラテジーとは比べものにならないぐらいアグレッシブに攻めることが出来ます。
後述する処刑によるAP回復と、スキルによるAP回復がうまいことハマると、「ずっと俺たちのターン!」てな感じで1ターンで10体以上の大群を一掃できることもあり、めちゃくちゃ爽快です。
処刑によるポイント回復
敵のHPをゼロにするとダウン状態になり、ダウン状態の敵には処刑ムーヴを発動することができます。
ギアーズではお馴染みのシステムですが、これまでのシリーズでは処刑を行うことによるメリットは特になく、あくまでバイオレンスな演出の1つにとどまっていました。
本作では、処刑を行ったユニット以外のアクションポイントが回復するという、非常に大きなメリットが得られるようになっています。
逆にダウン状態の敵を放置しておくと、蘇生されて戦線に復帰してしまう危険性もあります。
これによって、オーバーキルしてしまわないようスナブピストルでダウンさせる、処刑出来そうにないからグレネードで粉々にする、処刑できる位置に来るまで待ってからダウンさせるなど、どのタイミングでどうやって敵を倒すかという戦略性が生じています。
多彩なビルド
クラスには4つのカテゴリに分かれたスキルツリーがあります。
同じ支援兵でも、APを回復するメディック、射撃を強化するストラテジスト、チーム全体の回復を担うコンバットメディック、ユニット単体の回復に特化したサージャン、といったように役割が大きく異なります。
さらに、装備品(武器パーツ、アーマー)についているパッシブスキルの種類も豊富です。
スキルと装備品の性能、そしてパッシブスキルの組み合わせをいろいろ考えるというのが、なかなか楽しいです。
スキルも装備も充実した終盤では、高所からクリティカルヒットを連発する狙撃兵、リロードをせずに撃ちまくる重装兵、毎ターンのようにグレネードと地雷を投げる斥候などなど、序盤とはまるで別ゲーのような立ち回りができるようになります。
範囲を指定できるオーバーウォッチ

「オーバーウォッチ」とは、自ターンで待機状態になり、射程内の敵が動いたら自動的に発砲するというお馴染みのアクションですが、本作でのオーバーウォッチは範囲を指定することが出来ます。
複数のキャラで通路を監視して敵を通さないようにしたり、お互いが死角をカバーしあったり、Eホールから出てきた敵を穴に落としたり。
敵の移動経路をうまく予測できれば、敵が一切攻撃できないままターンを終了させることも可能です。
敵も頻繁にオーバーウォッチを使用してくるため、それをどうかいくぐっていくかを考えるパズル的な要素もあります。
手強いボス戦
迫力のボス戦はなかなか手強いです。
ボスの行動パターン自体は単純なものですが、数ターンおきに雑魚の増援が湧いて出てきます。
強力なボスの攻撃を避けながら、雑魚に包囲されないよう位置取りに注意しつつ、ボスのHPを着実に減らしていかなければなりません。
通常の雑魚戦とは異なるアプローチが求められ、良いバリエーションになっていました。
カスタマイズ要素
装備する銃とアーマーは、材質やカラーリングを自由に変更できます。
また、ヒーローキャラ以外は、髪型やアクセサリー、傷跡なども変更可能になっているので、愛着がわくような作りになっています。

戦隊もののような派手なカラーリングにしてみたり、黒でまとめてオニキスガードっぽくしてみたりと、自分だけのギアーズを編成できるのは楽しいです。
イマイチだったポイント
翻訳の質が非常に低い
日本語訳の質は、近年まれに見るレベルで酷いです。
『4』のときからその傾向はありましたが、文脈やキャラの性格・性別を無視した変な訳が非常に多いです。
ミケーラの一人称が俺になったり、ゲイブやシドが急にオネエになったりします。
ヴィランの名前”UKKON”のカナ表記が、オーコンになっているのも違和感があります(発音では完全にウーコンと言っています)。
また、シリーズお馴染みの人気キャラ、オーガスタス・コールの名前が「アウグストゥス」になっていたり、「明るい」や「フランス語」というラストネームのキャラを見たときは、思わず目を疑いました。
致命的なのが、スキルの説明文が間違っているということ。
「take a shot」を「撃つ」ではなく「射撃を受ける」と誤訳してしまっているため、いくつかのパッシブスキルの発動条件が意味不明になっています。
例えば、ダブルダウンというパッシブスキル。
原文では「After this unit takes a Shot, it gets +5% Damage for this turn. This effect stacks up to 3 times.」ですが、
日本語では「このユニットが撃たれた後、このターンでダメージが5%増加。この効果は3回まで累積される。」となっています。
本来は撃つたびにダメージボーナスを得られるスキルなのですが、日本語の説明を文面通りに読みとると、自ターンでわざと敵のオーバーウォッチに引っかかって撃たれるか、オーバーウォッチをしていて撃たれたときにしか効果を発揮しない、扱いにくすぎるスキルになってしまっています。
他にも、新型光学装置というパッシブスキルは、日本語ではクリティカルヒット確率の増加になっていますが、本来はクリティカルダメージの増加です。
確率とダメージではまるで意味が違います。
戦闘時のログ表記も、単語をただ置き換えているようなもので不自然です。
レベルが上がりにくい
戦闘による経験値の入手量が少なく、強制的に使うことになるヒーローキャラ以外はろくにレベルが上がりません。
ストーリーの進行に伴って、採用できる新兵のレベルが上がっていくので、ちゃんと戦ってきたキャラよりも新兵の方がレベルが高いということがザラにあります。
スキルの恩恵が大きい戦闘バランスになっているので、ともに死地をくぐり抜けてきた戦友があっけなくお払い箱になってしまうことも。
XCOMでは戦死によるデメリットが大きく緊張感がありましたが、本作ではモブ兵士を育てる意味がほとんどなくなっており、単なる使い捨てのような扱いです。
サイドミッションの足踏み感
サイドミッションは、ストーリー上の必要性がないうえに、クリアしなければならない回数が多すぎます。
戦闘が面白いとはいえ、早くストーリーの先が見たいのに足踏みさせられる感じで、フラストレーションが溜まりました。
言い方は悪いですが、本来は10時間ぐらいで終わるストーリーを、無理やり20時間超に水増ししているという印象が強いです。
サイドミッションは、クリアすればメインの攻略が楽になるがスルーすることもできる、ぐらいの位置づけで良かったのではと思いました。
また、特定のサイドミッションは難度が異常に高く感じました(1ユニットしか使用できない救助、2ユニットしか使用できないコントロール)。
幸い、サイドミッションは2分の3、もしくは4分の3をクリアすればいいので、難しいミッションはスルーできるようになっていますが。
装備メニューが見にくすぎる
装備の性能や比較が一目で分かるようになっておらず、装備品は山のように手に入るので、装備の整理整頓が非常に面倒です。
また、武器パーツはA/Dキーで部位が切り替えられるのに、頭・胴体・足のアーマーを変更する際はいちいちESCキーで戻らなければいけないというのも地味に面倒くさいです。
総評

- 興味深いストーリー
- ギアーズらしさ満載のアグレッシブな戦闘システム
- 幅広いクラスビルド
- 見た目のカスタマイズ要素
- 酷すぎる日本語訳
- レベルアップのペース
- サイドミッションによる水増し感
- 装備メニュー
ジャンルは違えど、”らしさ”を十分に感じることのできる、素晴らしいスピンオフ作品でした。
基になっている『XCOM』シリーズほどのリプレイ性とプレイバリューはありませんが、ギアーズファンかつターンベースストラテジーファンには間違いなくおすすめできます。
『Halo Wars』のようにシリーズ化を期待しています。
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