下げきったハードルを余裕でくぐり抜けてくるぐらいつまらないNetflixドラマ版『バイオハザード』の感想

『バイオハザード』の実写化はどれもこれもつまらないですが、その中でも圧倒的なつまらなさを誇るNetflixのドラマ版『バイオハザード』の感想をネタバレ込みで書いていきます。

クッソつまらなかったのでみんなも見たらいいよ。

これが正史なの?という謎の設定

ショーランナーを務めているアンドリュー・ダブ氏は「ゲームは本ドラマのバックストーリーなんだ」「シーズン5ぐらいまでいかないと無理だけど将来的にはドミトレスク夫人も出したいよ」などと語っており、本作はどうやらゲームと地続き、いわゆる正史扱いらしい。
確かに作中では「リサ・トレヴァー」や「アウトブレイク隠蔽のため核で滅んだラクーンシティ」「ウェスカーは火山で死んだ」など原作に言及する場面が多々ある。

では原作に忠実なのかといえばそうでもなく、パラレルワールドでもなければ納得できないような設定もいくつかあるので困惑してしまう。

その最たるものがアルバート・ウェスカーだ。
本作のアルバート・ウェスカー役にはランス・レディックが起用されている(彼の演技はいつもながら最高で、彼のおかげで本作がかろうじて見れるものになっているというのがなんとも言えないところだ)。
金髪白人のウェスカーがなぜ黒人になっているのか?
ウェスカー計画の知られざる生き残りだとか、脳を別人に移植したとか、何かしらの理由が用意されているのかと思いきや、なんと5で死んだあのアルバート・ウェスカー本人のクローンだったことが明らかになる。

へぇー、アルバート・ウェスカーって黒人だったのかー知らなかった。

この事実が明らかになる回想では、ランス・レディックが5のウェスカー同様にサングラスとレザーコート姿で登場するのだが、一人だけ世界観が浮いているし、ブレイドのコスプレにしか見えないしで、不覚にも爆笑してしまった。

シリーズではお馴染みの諸悪の根源、アンブレラ社も出てくるのだが、アンブレラは4のときにはすでに崩壊していたはず。7、8で登場したアンブレラは軍事企業であって、製薬企業のアンブレラとは別モノだ(ロゴも赤白ではなく青白)。
本作で出てくるアンブレラ社とは一体何なのだろうか。8の後になんだかんだあって街一つ作れるぐらいの大企業に返り咲いたと考えるのはちょっと無理がある。
ちなみに、本作のアンブレラを仕切っているイヴリン・マーカスは、アンブレラの創設者ジェームス・マーカスの娘という設定。彼に家族はいなかったはずだが、どうでもいいか。

クリスやレオンたちの戦いが、本作の愚かな登場人物達の手によって無に帰したと思うと、なんとも言えない悲しみがこみ上げてくるのはぼくだけだろうか。
このドラマのせいで、ゲームに影響が出てしまわないかだけが心配だ。

話が絶望的につまんねえ

本作では、2022年の過去編と2036年の現代編、2つの時間軸で話が展開していく。

こういう手法をとる場合、過去編と現代編で起こることがリンクしていたり、過去編でミスリードを誘っておいて現代編でアッと驚くような展開を用意したりと、見せ方に工夫が凝らされている場合が多いのだが、本作ではただただ過去編と現代編が交互に流れるだけ。
ほんとうにただ交互に流れるだけで工夫もクソもないぶつ切り状態なので、ただでさえ面白くない話が更に面白くないものになっている。
そのうえ、過去編でさらに過去に遡ったり、現代編でちょっとだけ過去に遡ったりする場面もあり、一貫性がない。

過去編は主人公ジェイドと妹のビリー、父親のウェスカーがアンブレラが管理するニュー・ラクーンシティに引っ越してくるところから、現代編はジェイドがゾンビの生態を研究観察しているところから話が始まる。

過去編では、アンブレラ社のセキュリティがザルすぎだったり、レズビアンだの”強い女性像”だのといったポリコレ要素のねじ込みがウザかったりするが、そんなのは些細なことだ。

「アウトブレイクが発生した理由」「ジェイドとビリーが決別した理由」はいつまで経っても明らかにならず、「ウィルスに感染して不安定になっていくビリー」「向精神薬ジョイの危険性」「アンブレラとアルバート・ウェスカーの秘密」「双子の出生の秘密」といった現代編とはほとんど関係のないどうでもいい要素が、クソつまらないティーンエイジャーのメロドラマ風にグダグダと語られていく
『バイオハザード』という作品にティーンのメロドラマを期待している人がどこの世界にいるというのだろうか。

過去編ではゾンビ犬が1匹と、終盤にヒョロいタイラントが1体出てくるのみで、サバイバルホラー感は皆無。
見ていて恥ずかしくなるようなクソつまらない謎解きシーンがあるが、あれでバイオらしさを演出したつもりなのだとしたら正気を疑うよ。

結局、シーズン1では肝心なところが1つも明らかにならないまま(一応、研究施設の爆発によってタイラントが解き放たれアウトブレイクが発生した…のか?という匂わせはある)、秋葉原にいるエイダ・ウォンに会いに行く、というところで終わる。が、2022年だとエイダはもう50近くのBBAなので、ごめんけど全く盛り上がらない。

ゾンビが出てくる分、現代編は面白いのかといえば否。こちらもまた地獄である。

一応、過去編にはなかったサバイバルホラー感が少しはあるものの、ポール版の3作目以降と同じレベルで世界が崩壊してしまっているため、どうでもいい感が強すぎる。
『バイオハザード』の魅力は、外界から隔絶された閉鎖的空間における恐怖であって、大規模なゾンビアポカリプスではないと思うんだけどなあ。

現代編の展開は「アンブレラかゾンビが出てくる→逃げる→捕まる」基本的にこれの繰り返し。
ジェイド相手には手加減してくれる忖度ゾンビ、意味もなく犠牲になる人々、大層なアーマーを着込んでいるくせにゾンビに飛びつかれると即死するアンブレラ兵などなど、とてもおもしろい要素のオンパレードだ。

後半でジェイドは、ゾンビを引き寄せたりゾンビに認識されないようになるフェロモンを発見するが、だからどうしたって感じだ。
1話目の時点でゾンビに認識されないようになる何かをスプレーで吹き付けていたのを、脚本家は忘れてしまったのだろうか。

最終的に、闇落ちしたビリーに撃たれた挙げ句に娘を攫われたり、その娘にはゾンビを手懐ける謎能力があるっぽかったりするが、これらもまたどうでもいい。

1ミリも好感が持てない脅威の主人公ジェイド

話がつまらなくても、主人公が魅力的であればまだなんとかなったりするが、残念ながら本作の主人公ジェイドには魅力が無い
無いどころか、クソすぎて早く死んでほしいと思うぐらいだ。
話がどうでもいいと感じてしまう原因はコイツにあると言っても過言ではない。

コイツがやること成すことすべてが裏目に出る上に自覚も反省もしないので、見ていてすごくイライラさせられる。
過去編ではまだ未熟な10代だから、という言い訳がかろうじて通用するものの(反抗的であることがカッコいいと思っている典型的なイタいガキなので見ていて辛いが)、現代編でも浅慮で愚かなところは変わらないのでたちが悪い。

現代編でジェイドに関わった人間は漏れなく巻き添えになってバタバタと死んでいくので、ゾンビよりもこいつのほうがよっぽど厄介だ。
無断でゾンビの生体実験を行った挙げ句、不注意で同僚の妊婦を死なせたときには開いた口が塞がらなかった。

最終話では「あんたは自己中でアホな死をばらまくウィルスだ」と、こちらが思っていたことをビリーが代弁してくれるので一瞬だけスッキリ感が味わえるが、意図してムカつくキャラにした挙げ句に話がつまんなくなってるので本末転倒だ。

現代編のラストでジェイドはビリーに撃たれるが、はっきり言ってそのまま死んでくれていい
最後の最後まで好きになれない主人公ってかなり珍しい気がする。

キャラがいない

主人公には絶望的に魅力がないうえに、その他に魅力的なキャラもこれといって存在しない。
というか、そもそもちゃんとした人格と存在感を持ったキャラが6人ぐらいしかいない。そしてそのうち2人はランス・レディックだ。

アンブレラの刺客として登場するデブ(バクスター)と、ノリが軽い方のウェスカー(バートおじさん)はなかなか良いキャラをしていたと思うが、8話も使っておいて良いと思えるキャラが2人しかいないのは致命的だろう。

ちなみに本作で貴重な面白いシーンのひとつは、バクスターが容姿に見合わない華麗なムーブでゾンビ相手に無双するところだ。

前代未聞の人種チェンジ

既存キャラの人種を変えることにとどまらず、なんと本作では劇中で人種が変わるという前代未聞の試みが行われている。

どういうことかというと、ジェイドの妹ビリーは、過去編ではタヌキ顔のフィリピン系なのに、現代編ではキツネ顔の韓国系になっているのだ。新種のT-ウィルスには人種を変える力もあるってか?
欧米人からすればどっちもアジア系で見分けがつかないのかもしれないけど、違和感がスゴすぎる。

人種に気を配っているようで、実態はものすごくいい加減なところでも神経を逆なでしてくれる。

おわり

とにかく話もキャラも酷く、見どころといえば「ほんの一瞬だけ出てくるリッカー」「バクスターの無双シーン」「ブレイドのコスプレをしたランス・レディック」「デカすぎるワニ」ぐらいしかありませんでした。
ネームバリューはあるので視聴者数は稼げてるみたいだけど、評価はとんでもなく低いので打ち切りコースでしょうかね。

Netflixの会員数が減ってるのはこういうクソコンテンツにばっかり投資してるからじゃないの?と思う今日このごろ。
面白い作品を打ち切って、つまらん作品を濫造するのはもう止めてほしい。

ネトフリの実写化作品はどれもイマイチなので(良いのは『ウィッチャー』ぐらいか)、ワンピースも幽遊白書も聖闘士星矢も期待しないほうが良さそうかな。

以上。おわりです。

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