『スカーレットネクサス』の感想を。足りないところは多いが確かな熱量を感じる完全新作ARPG

今回は、体験版プレイ時から楽しみにしていた、バンナムによる新作アクションRPG『SCARLET NEXUS(スカーレットネクサス)』の感想・評価をお届けしたいと思います。

ユイト編、カサネ編を両方ともクリア。レベル上げ以外の実績は全て解除しました。

良いと思ったとこイマイチと思ったとこを書いていくスタイルで。
ネタバレはありません。

ジャンルアクションRPG
開発元・販売元バンダイナムコゲームス
総プレイ時間46時間(ユイト編:28時間、カサネ編:18時間)
おすすめ度★★★★☆

良いと思ったところ

アニメ調のグラフィック

2Dアニメさながらのキャラグラ、戦闘中のカッコいい視覚効果、異物としての存在感が際立つ怪異のデザイン。

ビジュアル面ではほぼ文句なし。めっちゃいいです。

操作自体はシンプルだが忙しく楽しく気持ちいいアクション

基本アクション操作はオーソドックス。方向スティックの入力やディレイによるコンボの派生、武器や操作キャラの切り替えといったシステムはないので、習熟を必要としないシンプルかつ遊びやすい作り。
動かしていてとにかく気持ちいい

念力は基本的に周りに転がっているオブジェクトを投げつけるだけ(QTEが発生する特殊オブジェクトや、線路上の敵を一掃できる電車、上に乗って敵を轢いていけるバスといった豪快なものもたまーにあります)。

これだけなら単調になりそうですが、ここに「SAS」というシステムが加わることで戦略性がありながら爽快なアクションに仕上がっています。
「SAS」とは味方の脳力を一時的に借りることができるシステム。

油まみれの敵には発火能力が有効で、高速で動き回る敵には超高速もしくは瞬間移動が有効で、接近すると無敵になる敵には透明化が有効で、といったように敵によって有効なSASが異なります。

SASで弱点を突くとブレイクゲージを大きく削る事ができ、あっという間に一撃必殺フィニッシュムーブ「ブレインクラッシュ」へと繋げられます。
敵に合わせて素早くSASを切り替え、大群をあっという間にしばき倒せたときの快感たるや!

ちなみに、体験版のときに危惧していた「ブレインクラッシュ時の演出によってテンポが悪くなってしまう問題」は、オプションで簡易設定が追加されたことによってあまり気にならないようになっていました
通常演出ではバリエーションが多くてカッコいいがテンポが悪く、簡易演出ではワンパターンだがテンポが良い、というトレードオフの関係になってます。お好きな方をお選びください。

ストーリーの進行に伴い、「脳駆動」や「領域展開脳内空間」といった強化モードを使えるようになったり、各キャラとの絆を深めることで連携技「コンビネーションビジョン」「アサルトビジョン」が使えるようになったり、スキルツリーで複数のSASを同時使用できるようになったりして、アクションの幅はそこそこですが広がっていき、ゲーム終盤での戦闘はハイスピードで実に爽快!(反面、使えるSASが限られている序盤はかなり物足りないです)

SAS時に表示されるカットインや、超脳力発動時や脳内空間発動時のエフェクトなど、アニメらしいかっこよさを追求した表現も凄く良いです。

興味が掻き立てられるストーリー・世界設定

本作のストーリーはユイトとカサネの両方の視点から描かれ、両方をクリアして初めて全体像が理解できるような作りになっています。

いい意味でも悪い意味でも中二感が漂っていますし、どこかで見たような展開だと感じる部分はあったものの、独自の世界設定とキャラ立ちのおかげで最後まで楽しめました。

どの程度がネタバレなのかよく分からないのと、あらすじを書いたら勘の良い人はだいたい分かってしまうと思うのでストーリーの内容については割愛しますが、アニメに抵抗のない人であれば概ね楽しめるかなと。
DLCや続編を見据えたような消化不良な部分もなくはないですが、ユイトとカサネのストーリーにはきれいに決着が付いているとは思います。

無駄な葛藤や苦悩が生じて物語が停滞することがないという点、ビジュアルこそアニメっぽいものの演出が控えめで悪い意味でアニメっぽい演出が少ない点も好印象でした。
宇宙から飛来する怪異と呼ばれるバケモノ、脳力のない人間が差別される世界、長く戦えるように成長を止める矮化剤、強制モザイクがかけられる視覚検閲、などなどの設定も面白いです。

が、劇中で語られることに対しての描写が足りていなかったり、限られた範囲内で話が展開していくので世界規模の話なのにスケールが小さく感じられたり、2周目は答え合わせのようで驚きがなかったりする部分は残念でした。
あと、ラスボスの行動の時系列がちょっとよく分からなかったりしました。

キャラの掘り下げ

本作にはペルソナのコミュよろしく、各キャラごとに絆エピソードという掘り下げイベントが用意されています。
この絆エピソードがなかなか良くて、こいつ性格きっついな…と思っていたキャラ(主にカサネとシデン)も気づいたら好きになってました。

主人公に思いを寄せる幼馴染、生真面目なベテラン隊員、本心が見えないチャラ男など、キャラ付けはテンプレっちゃあテンプレなんですが、キャラデザや声優の演技が良いと言うのもあるんでしょう。そこは特に気になりませんでした。

絆エピソードでは、各キャラの掘り下げが丁寧に行われるだけでなく、メインストーリーの補完の意味合いがあるものもあり、またユイト編とカサネ編ではきちんと別のイベントが用意されているのがグッド。

探索中にキャラ同士がめっちゃお喋りするし、プレゼントしたものをきちんとアジトに飾ってくれるし使ってくれる、というのも気に入りました。

どちらとも言い難いところ

イベントシーンの紙芝居的演出

本作のイベントシーンは、だいたい7割ぐらいが紙芝居というか動く漫画のような手法で描かれています。
予算の都合なのかどうかは分かりませんが、ちょっと手抜きっぽく感じられてしまうのは事実。
ここはちゃんと動きをつけてほしかったなー、と思うシーンも少なくありませんでした。

しかしこの演出手法が全てのシーンで手抜きにしか感じられないかというとそうでもなく。

アクションが介在しないただの会話シーンでは、コマ転換や構図などに工夫を凝らしていて、退屈に感じさせないための演出として活きていたと思います。

ただ、JRPGにありがちな問題ですが、全体的にイベントシーンが多すぎ長すぎなのは気になりました。

イマイチと思ったところ

面倒くさいだけのクエスト

本作にはメインストーリーとは別に30以上のクエストが用意されていますが、これがダメダメ。

クエストの内容は「指定された敵を指定された方法で○体倒せ」というお使いがほとんどで、ストーリー的な意味合いは一切ありません。
クエストの報酬はほぼ全てショップで買える物ばかりなうえ、条件の達成が面倒くさいものも多いので、労力と報酬が見合っていない作業でしかなかったです(ユイト編では全てのクエストをクリアしましたが、カサネ編では全部無視しました)。

クエストを受注すると「アクティブにしますか?」と聞かれるのですが、アクティブにしたところで、画面右端にクエスト名が表示され、討伐対象の敵をロックオンしたときに青色のマーカーが表示されるだけ。
討伐対象がいるエリアや達成条件、進捗状況といった重要な情報は一切表示してくれないので、クエストのたびに討伐対象となるモンスターの名前を確認→エネミー図鑑でどこに出現するかを調べるという作業が必要になるのも良くなかったです。

飽きがこないとは言えない作り

異なる視点から物語が描かれるとは言っても、ユイト編とカサネ編でオーバーラップしている部分は少なくないので(特に序盤と終盤)、新鮮味はほとんどないです。

また、ユイトとカサネでは使用する武器が違うものの、どちらを使ってもアクションにあまり変化がないですし(ややユイトのほうが使いやすくて強いかなという感じ)、探索するエリアもほぼ同じで敵のバリエーションも多いとは言えないので、アクションだけで楽しさを2周維持させるのは少し厳しいものがあるかなと感じました(個人的に、この感覚は『ニーアオートマタ』に非常に近かったです)。

ユイト編とカサネ編でまるまる2周させるのではなく、途中途中で交代しつつ一本に収束していく作りのほうが良かったような気がします。

RPG要素の欠如

本作は一応ARPGというジャンルに属していますが、本筋と関係ないところでの寄り道要素、闘技場やミニゲームといったRPGの醍醐味といえるようなアクティビティは一切ありません
隠しダンジョンなり裏ボスなりといったエンドコンテンツもなし。

クリア後に追加されるクエストでは各キャラの最強武器の素材が手に入りますが、コレを使って戦うべき強敵は存在しません。

とは言え、RPG要素ががっつり盛り込まれていたら、それはそれで2周目がダルいという感想になってしまいそうなので難しいところだとは思いますが…

エリアの構造

簡潔に言うと平坦で単調。
SASを使って柵を通り抜けたり電気を通したりといったギミックはちょこちょこあるものの、基本的にはひたすら平坦な道を走って敵を倒して走って倒して、の繰り返し。

訪れたことのあるエリアは再訪できますが、アイテム交換のために足りない素材を集める以外に訪れる理由はありません。

ゲーム後半のエリアが妙に長かったり、ラストのエリアが既存エリアの切り貼りだったのもイマイチでした。

ジャスト回避のタイミングがシビアすぎる

アクションゲームでジャスト回避がシビアだと思ったことはこれまでにあまり無いんですが、本作でのジャスト回避は、結局最後までタイミングがイマイチつかめませんでした。
透視のSASを使えば楽にできるようになっていますが、透視ありきの調整という感じがしました。
ガチのアクションゲーマー向けの作品ではないのに、ここだけ妙にシビアにしたのは謎です。

しつこいチュートリアル

移動や各SASの効果、システムに関してのチュートリアルがその都度ポップアップするのですが、クリアデータを引き継いで始めても全く同じチュートリアルを見せられます。
2周する前提なのだから、チュートリアルやTIPSをオフにできるオプション設定は搭載してほしかったです。

OPのアニメーションがなんかショボい

これはゲームのおもしろさとは関係ないのでどうでもいいっちゃいいんですが。

せっかくオーラルの主題歌がかっこいいのに、それに合わせて流れるアニメがなんかショボいです。
二昔ぐらい前の、原作と絵柄が違いすぎるアニメみたい。

ゲーム内の3Dモデルを使って作れば良かったのに。

おわり

ビジュアルのかっこよさやアクションの楽しさ、ストーリーとキャラの掘り下げが素晴らしいので、不満も込みでも星4つ評価です。
バンナムを少しだけ見直しました。テイルズの新作も買って見ようかなと思うぐらい(体験版を触ってみて購入は見送ることにしました)。

敵の当たり判定が消失するバグには1度だけ遭遇しましたが、最近のゲームでは珍しく目立った不具合が特になかったというのも評価が高いです。

次回作があるかどうかは分かりませんが(個人的には是非とも作っていただきたい)、操作キャラチェンジや多彩なコンボなどバトルシステム面の拡張に加えて、RPG要素の充実にも期待したいです。

日本価格はさすがにちょっと高すぎるのでセールを待ったほうが良いかも、という感じはしましたが、かなり面白かったです。

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