クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET(テネット)』を2回鑑賞して理解した気になったので、自分なりの解釈で解説・考察を書いていきたいと思います。
今回で最終回。
スタルスク12とベトナムで同時に行われる最終決戦とエピローグ、そして諸々の疑問についての解説・考察です。

もちろんネタバレ全開です。
「あれはどうなの?」という疑問や、「ここは違うんじゃない?」というツッコミも大歓迎です。
概要
作戦の経緯と目的
主人公がセイターとのカーチェイスで得た情報によって、セイターの故郷スタルスク12でアルゴリズムが組み立てられ、大規模な爆発によって地下深くに埋められるということが分かる。
セイターが手首につけていた心拍数測定器はデッドマン・スイッチで、セイターが死亡するとアルゴリズムを入れたカプセルの座標がメールで送信される仕組みになっていた。
メールを受け取った未来人がアルゴリズムを掘り出し起動することで、過去の存在である自分たちは抹消されてしまう。
そのためTENETチームは、アルゴリズムが地下深く埋められる前に回収しなければならない。
セイターは末期癌を患っており、世界を道連れにして死ぬ気だとキャットは悟る。
セイターが最期の場所に選ぶのは、彼が最後に幸せを感じた場所である、ベトナム沖のヨット上だと推測。
こうして、スタルスク12にてアルゴリズム回収のための大規模な時間挟撃作戦が実行されることになり、それと同時に、キャットがアルゴリズム回収が成功するまで、セイターの死を引き延ばす歯止めとなるためにベトナムへと向かう。
作戦実行
アルゴリズムを回収するために動いている主人公&アイブスと、それをサポートするニール、セイターの死を可能な限り引き延ばすキャット、この4人の視点から何が起きていたのかを見ていきます。
主人公&アイブスの視点
- TENETの船マグネヴァイキング内の縦回転ドアを使って順行に戻る
- 順行であるレッドチームとして作戦に参加
- すでに作戦を終了しているブルーチームの情報を元にブリーフィング
レッドチームは、ブルーチームの撤収地点に着陸し、戦闘を繰り広げつつブルーチームの着陸地点へと向かう - 主人公とアイブスは別働隊として坑道に入り、アルゴリズム回収に向かう
- 爆発の10分前に作戦スタート
- ブルーチームの撤収地点に着陸
- 敵を倒しながらとにかく前進し坑道を目指す
- ジャスト5分のところで、敵の注意を引くために順行と逆行の同時攻撃でビルが破壊される
- 坑道に向かう最中、クラクションを鳴らしまくる装甲車に追い立てられる
- アイブスとともに坑道に突入する
- ヴォルコフの仕掛けた罠により出口がふさがれる
- 坑道をひたすら突っ走る
- 鍵のかかった鉄格子に阻まれる
- ブルーチームの誰かの死体が、鉄格子の向こう側にいることに気付く
※バックパックに、穴の開いた硬貨を赤い紐でくくり付けている - ヴォルコフがアイブスを撃つ
- 電話越しにセイターと最後の会話をする
- ヴォルコフがアルゴリズムをカプセルの中に入れて落下スイッチを押すが、ケーブルが引っかかる
- ヴォルコフが発砲する直前に死体が起き上がり、解錠して鉄格子を開く
- 主人公が急いで中に入り、タイムカプセルを落とそうとするヴォルコフともみ合いになる
- アイブスも中に入り銃を向けるが、主人公が邪魔で撃てない
※このとき、鉄格子を開けた何者かが逆再生で出て行くのが見える - ヴォルコフを突き落とす
- カプセルの中からアルゴリズムを取り出す
- 上から降りてきたロープに捕まり、爆発とほぼ同時にアルゴリズムを抱えて脱出
- 任務完了
ニールの視点
- レッドチームが順行に戻るより一足先に(時間軸上で言えば未来)マグネヴァイキングから降りる
- 逆行であるブルーチームとして作戦に参加
- すでに作戦を終了しているレッドチームからの情報を元にブリーフィング
ブルーチームは、レッドチームの撤収地点(爆心地上部付近)に着陸し、戦闘を繰り広げつつレッドチームの着陸地点へと向かう - 爆発が起こるよりも少し前に作戦スタート
- レッドチームの撤収地点に着陸
- 坂を下っていると、後方からバック走行で坂を下っていく敵の装甲車が来たので発砲する
- 敵を倒しながら前進する
- ジャスト5分のところで、敵の気を引くため順行と逆行の同時攻撃でビルが破壊される
- ヴォルコフが逆再生で罠を回収し、坑道から出てくるのを目撃する
※順行視点ではヴォルコフが坑道に入って罠を仕掛けている - 敵陣にある回転ドアを目指す
- 自分が逆再生で回転ドアに戻っていくのを確認し、回転ドアに入る
~ここから順行~
- 回転ドアから出る
- 敵の装甲車に乗り込み坑道に向かう
- 坑道に入ろうとしている主人公たちにクラクションを鳴らすが無視される
- 爆発により坑道の入り口がふさがれる
- 装甲車に再び乗り込み、爆心地の上部、ブルーチームの着陸地点付近を目指す
- 過去の自分たちが装甲車を撃ってくる
- 爆心地上部に開いた穴からロープを垂らす
- 爆発が起きるギリギリのところで引き上げる
- 任務完了
~任務完了後に最後の逆行~
- 坑道内に侵入
- ヴォルコフと格闘している主人公らを目撃
- 主人公とアイブスが出ていくまで鉄格子を開けて待つ
- 2人が出たところで鉄格子の鍵を閉める
- 主人公を守るためヴォルコフに撃たれて死亡
キャットの視点
- マグネヴァイキングの縦回転ドアで順行に戻り、マヒアとともにセイターのヨットに向かう
- 過去の自分と過去のセイターがヨットから去るまで待つ
- 一度息子とともにヨットから降りたけど、セイターを驚かすために戻ってきた、という体でヨットに乗り込む
- 過去の自分がぶちまけた皿の掃除をして、手すり下のワイヤーを外す
- セイターが到着するのを待つ
- セイターが到着し、キャットが戻ってきていたことに驚く
- 仲直りをしに戻ってきたとセイターに信じ込ませる
- セイターが息子を連れてくるよう部下に指示する
- セイターが主人公と電話で話している隙に、日焼け止めクリームを床にぶちまけて広げておく
- セイターの背中にも日焼け止めクリームを塗る
- アルゴリズム回収完了の合図はなかったが、セイターの勝ち誇った顔が許せなかったので撃つ
- 日焼け止めクリームで滑らせ、セイターを船から突き落とす
- 自らも海に飛び込む
- エピローグへ
詳しく解説してみる
映画前半でマイケル・ケイン(クロスビー卿)が、オペラハウステロと同日にスタルスク12で大規模な爆発があったと言っていたのは、まさにこのクライマックスで起きる爆発のことだったんですね。
主人公は、オペラハウス作戦と同日に舞い戻ってきたということになります。
実はセイターの生き死に自体はあんまり重要じゃなくて、爆発よりも前にアルゴリズムが回収できるかどうかが重要なのですが、キャットが話に絡んでくるせいでそのへんがごっちゃになっている感があります。
セイターの目的は、アルゴリズムを埋めて自分も死に、世界を道連れにすることでした。
セイターの目的と、アルゴリズムを起動したい未来人の目的との間に微妙にズレがあるので、そこも混乱の原因になっている気がします。
主人公がキャットと別れるとき、「身の危険を感じたら連絡しろ」と言って携帯を渡しています。
これによって、主人公はプリヤによってキャットが消されることを未然に防ぐことができました。
このとき主人公はすでに、知りすぎた者はプリヤに消されるということを予感していたのでしょう。
スタルスク12編
スタルスク12での爆発は既に起こっていることなので、爆発自体は止めることができません。
わざわざアイブスが下っ端兵士に、爆弾を止めるのが目的じゃないと釘を差していました。
そもそも下っ端兵には、この作戦がアルゴリズム回収作戦だということも知らされていないっぽいですよね。
大元であるアルゴリズムについて知らされているのは、あくまで選ばれたエージェント(主人公、ニール、アイブス)のみということなんでしょう。
下っ端兵たちがどういう経緯でリクルートされたのかが気になります。
レッドチームの一時間後にブルーチームがブリーフィングをしており、レッドチームがブリーフィングを行っている時点で、ブルーチームの作戦はすでに終了しています(同じく、ブルーチームがブリーフィングを行っている時点で、レッドチームの作戦は終了している)。
ヘリで運んでいたコンテナの中には、既に作戦を終了したチームが入っているということですね。
爆発前の10分間で、順行と逆行による時間挟撃作戦を実行します。
13:00、レッドチームのブリーフィング
↓
13:25、レッドチーム作戦開始
↓
5分
順行逆行同時攻撃によるビル爆破
5分
↑
13:35、ブルーチーム作戦開始(ほぼ同時に爆発が起きる)
↑
14:00、ブルーチームのブリーフィング
タイムテーブルはだいたいこんな感じだと思います。
レッドチームとブルーチームは、相互が着陸・撤退する地点に向かって進行し、並走する形で戦闘を展開していきます。
つまり、レッドチームはブルーチームの撤退を援護し、ブルーチームはレッドチームの撤退を援護しています。
レッドチームかつ別働隊である主人公とアイブスは、とにかく坑道に向かいます。
ブルーチームの視点では、着陸する直前に爆発があり、そこから任務開始です。
着陸前に、爆発の逆衝撃波に備えるシーンがありましたね。
またこの着陸シーンには、ニールの乗った装甲車が主人公たちを引き上げようとしているのがチラッと映っています。
ヘリから降りたブルーチームは、レッドチームが着陸する場所まで下りながら敵を倒しつつ進みます。
ニールが坂を下るとき、後ろから敵の装甲車がバックで坂を下っていくのでそれを撃っていますが、このときはそれがまさか自分の乗る装甲車だったとは気づかなかったのでしょう。
実際にここでレッドチームとブルーチーム、そしてセイターの私設部隊による戦闘を細かく考える必要は全くありません。
これはあくまで、順行と逆行が入り乱れる大規模な戦闘が行われている、という舞台設定に過ぎないので(『ダークナイト ライジング』の終盤、警官と犯罪者の集団が殴り合ってるとこと同じ)
重要なのは、アルゴリズム回収作戦を実行する主人公&アイブスと、それをサポートするニール、この3人の動きだけです。
というかここの戦闘シーン、順行と逆行が入り乱れて、順行視点でも逆行視点でも逆再生現象が多発しているので、どっちがどっちか全く分からないんですよね。
腕につけたレッドとブルーのタグじゃなくて、もっとわかりやすいものにしてほしかったです(いちおう、逆行視点ではBGMも逆再生になっているという手がかりはありますが)。
5分きっかりのときに、順行と逆行からの同時攻撃でビルが破壊されます。
予告編にもあり、見た目的にはかなり面白いシーンになってますが、順行視点でも逆行視点でもビルは最初から壊れた状態で、修復されてまた破壊されるということになっているので、結局あのビルはいつ誰が建てたんだろう…?という謎なシーンにもなっています。
そのビルの崩壊によって敵の注意を引きつけた隙に、主人公とアイブスが急いで坑道に突入。
このとき順行に戻ったニールが、ヴォルコフの罠の存在を知らせるためにクラクションを鳴らしまくって装甲車で追いかけてきますが、そんなことを知らない2人はヤベえ敵に見つかった!と思っていたことでしょう。
爆心地の外まで持っていくことができなければ、アルゴリズムが未来人の手に渡ってしまう可能性があるので、ニールはかなり焦っていたと思います。
鉄格子に阻まれた主人公は、鉄格子の向こう側に転がっている死体のバックパックに、赤い紐で穴の開いた硬貨がくくりつけられているのを発見します。
オペラハウスで助けてくれた命の恩人との再会がこんな形になるとは。
ヴォルコフ視点では「なんか敵の死体が転がってるけど、まあいいか…」という感じだったのでしょうか。
セイターとの最後の会話で、アルゴリズムを起動したい未来人の動機が明かされます。
彼らの先祖(つまり我々)が引き起こした環境破壊によって、未来はマッドマックス状態になっており、もはや過去にしか希望を見いだせなくなってしまったんです。
それはそれで申し訳無いことだけれども、こっちだって死にたくはありませんから、アルゴリズムは回収しなければなりません。
映画序盤でフェイが「生存をかけた戦い」と言っていたのはこのことだったのですね。
死体が逆再生で起き上がり鍵を開けてくれたので、急いでヴォルコフを止めに入る主人公。
撃たれて倒れていたアイブスもそれに続きます。
ヴォルコフを突き落としてなんとかアルゴリズムを回収したものの、出口は塞がれた状態なので脱出しようがない!
とここで、ニールの機転で無事脱出に成功、無事にアルゴリズム回収作戦が完了します。
未来人の視点では、アルゴリズム座標のメールが届いたぞ!とワクワクして掘り出してみたら、何もないどころか、なぞの白骨死体があったということになります。
ベトナム編
過去の自分がセイターと喧嘩をしてマックスを連れてヨットを降り、さらにその後過去のセイターもヘリに乗ってどこかに去っていくのを待ってから、ヨットに乗り込みます。
つまり、キャットもセイターも、過去の自分達と入れ違いでヨットに乗り込んだということになります。
過去のセイターがどこに向かったのかは分かりませんが、おそらくオペラハウスでの241回収作戦が失敗に終わったという報告を受け、「バカンスしてる場合じゃねえ!」ということで去っていったんだと思います。
過去の自分がぶちまけた皿を片付けているときに、同時に手すりの下にかかっているワイヤーを外しています。
未来から逆行してきたセイターの死体がここで発見されるわけにはいかないので、セイターを殺して死体を始末する算段をつけていました。
逆行してきたセイターが到着しますが、そこにキャットが戻ってきていたということに驚きます。
彼の記憶では、キャットは喧嘩をしたあとマックスと一緒にヨットを降りたはずなので。
しかし彼もその直後にヨットを去っていますし、未来のキャットは逆行弾で撃たれて死んだと思っていますから、キャットがそこにいること自体を疑うには至りませんでした。
でもよく考えると、ベトナム旅行以降ではキャットとの関係は破綻している、つまりここで仲直りなど起こらなかったわけで、セイターほどの男が、目に前にいるのは未来のキャットだと気づかないのは少々おかしいですね。
もうすぐ死んで世界を道連れにできるから、どうでもよかったのかもしれませんが。
このときセイターは、”CIAから借りた”自殺ピルを使って死を迎えようとしていることが分かります。
CIAから借りたというのが本当かは分かりませんが、少なくともCIAの合言葉は知っていたので、CIAと繋がりがある、もしくはCIAにスパイを送り込んでいたのは確かでしょう。
ぼくはこのピル、車両倉庫で手下が主人公から奪ったやつなのかな?と思ったのですが、違うかもしれません。
仲直りがうまくいきそうなので、セイターは手下に連絡して息子をヨットにつれてくるように指示します。
これによって過去のキャットも戻ってきてしまうということになり、アルゴリズムの回収とは別に、セイター殺害までのタイムリミットが設定されてしまいます。
アルゴリズム回収を待たずにキャットが我慢できずに殺しちゃった、みたいな感じになっていますが、セイターを殺すなら過去の自分がヨットに戻ってくる前でなければならなかった、という事情があったんですね。
まあセイターはもとから自分で死ぬ気だったので、キャットがあえて手を下す必要は無いと言えば無いのですが。
殺す直前、自分が未来から逆行してきたキャットだと明かすシーンで、セイターはアッ!!という顔になっていました。
彼はあのときまで本当に目の前にいるのが過去のキャットだと思っていたんですね。哀れなり。
ギリギリのタイミングでセイターを殺したキャットは、急いでセイターの死体をヨットから投げ捨てます。
このときまだセイターは生きていることになっていますから、誰にも死体が見つかってはいけません。
セイターを投げ捨てたあと、過去の自分がヨットに戻ってきたのを見ながら、海に飛び込みます。
レストランでキャットが言っていた、あからさまな思い出話(夫に呼び出されてヨットに戻ったら、知らない女性が海に飛び込んだ。呼び出した夫はどこかに消えていた)がここにつながるわけです。
ボートで去っていくとき、セイターの死体がバッスンバッスン引きずられていくのがちょっと面白い。
ニールとの別れ
アルゴリズムの回収に成功した3人は、アルゴリズムを3分割してそれぞれが隠すことに。
しかしニールはここで、アイブスの意味深なセリフから、自分が下で鍵を開け主人公らを助けて死ぬと悟り、自分のアルゴリズムを主人公に託します。
これを不思議に思った主人公はここではじめて、バックパックに赤い紐で穴の開いた硬貨をくくりつけていた謎の人物がニールだったということに気づきます。
主人公はニールを引き止めたい気持ちを抑え、泣きそうになりながらも彼を送り出します。
ニールは、未来の主人公にリクルートされたこと、アルゴリズムをめぐる一連の戦いが主人公による壮大な挟撃作戦だったこと、起きたことは変えられないが何もしない言い訳にはならないことを告げ、去っていきます。
彼はその後最後の逆行に挑み、主人公だけでなく世界を救ってその人生に幕を閉じます。
エピローグ
戦いが終わり、キャットは自分が逆行を行ったよりも未来に戻ってきました。
息子の学校の前に、見たことのない黒塗りの車が停まっているのを見て、用心のために主人公からもらった携帯に電話をしておきます。
黒塗りの車の中には、プリヤとその手下がいて、知りすぎたキャットを始末しようとしていました。
しかしキャットが残した”記録”を聞き、この瞬間に戻ってきた主人公によって殺されてしまいます。
ここで主人公は、プリヤの裏で糸を引いていた人物もまた自分だったことに気づきます。
コメント
こんにちは。 サイトの解説記事を読ませていただきました。
自分も順行と逆行の傷の因果関係には興味がありました。自分なりに考えて出した結論があります。
結論から書きますと、ノーラン監督が描いた傷の因果関係は一部を除き矛盾してません。
逆行側が付ける傷は単純に、「順行物に傷を付けた物体が着弾したか貫通したか」によって傷が未来に向かって残るか過去に向かって残るかが決定されます。
逆行する物体が順行物に着弾すると、結果が過去に向かってのこり、逆行する物体が順行物を貫通すると結果が未来に向かって残ります。
仮に逆行弾で逆行人間を撃って弾が貫通し向こう側の順行の壁に着弾した場合は、どちらも結果が過去に向かって残ります。順行目線で見ると逆行人間と壁は復元されます。
主人公とニールが乗っていたBMWのサイドミラーは、アウディにぶつけられて、その結果が過去に向かって残ってました。という事はあのアウディは車ごと逆行させてあったということになります。
キャットの腹が撃たれた時は、逆行弾が貫通したので撃たれた結果が未来に向かって残りました。仮に貫通せず腹に着弾してた場合、キャットの腹の中には初めから弾丸が存在してた事になります。もっと言えばキャットが生まれる前からキャットの腹の中に弾丸があったという意味不明な状態になります。
また、空港で主人公が逆行主人公と取っ組み合いしてた時に主人公が逆行主人公の腕に突起物を刺してましたが、突起物は貫通せず着弾したので結果が未来に向かって残りました。逆行主人公からすると傷が最初に現れて刺されると傷が消えます。劇中の描写の通りでした。
この理屈通りだと、矛盾してるのは空港の逆行マシンの部屋にあった検証窓という事になります。あの窓ガラスは逆行弾が貫通しただけなので、結果が過去に向かって残ってるのはおかしいです。本来であれば未来に向かって残ります。
ニールが検証窓の弾痕を見て触ろうとするシーンはポスターにもなってましたが、あの窓の弾痕は間違いだということになります。
結果が過去に向かって残ってるのは、逆行弾が着弾してるであろう順行側の部屋の壁です。
ベケットさん、コメントありがとうございます!
楽しく読ませていただきました。
そこで疑問に思ったことがあります。
「傷を付けた物体が着弾したか貫通したか」というのは、「傷を付けた物体が傷表面に留まっているか否か」と言い換えることが出来ると思うのですが、とするとBMWのミラーと逆行主人公の腕の傷は着弾ではなく貫通となり、別の矛盾を招いてしまわないでしょうか。
もし言い換えることが出来ないのであれば、着弾と貫通の定義が曖昧な気がします(空港での刺し傷は着弾、では切り傷だったら?骨折だったら?腕が切り落とされていたら?などなど)。
因果の逆転現象は、映画内の描写ではどう考えても矛盾が生じてしまう問題だと思います。
「傷を付けた側の主観では因果の逆転現象が生じる」というルールであれば矛盾を回避できたはずなのですが、そうすると傷を付けられた側から見てなんの面白みもない画になってしまうので、ノーラン監督は矛盾が生じることを承知の上であえて画的な面白さを優先したのだろう、というのがぼくの最終的な結論です。
こんにちは。
BMWのドアミラーの場合は、物体を貫かずに当たった後通り過ぎてるので、結局は着弾扱いになってるんだと思います。
貫通でも「物体が当たって通り過ぎる」という点では同じですが、そこに”貫いてる”という要素も加わるため、因果関係の逆転が起こるのだと思います。
たしかに着弾と貫通の定義は曖昧だと思います。仮に、逆行人間が刃渡りの長い逆行ナイフで相手の腕を刺して刃の部分は貫通したけどそのままナイフを引き抜いてしまった場合、着弾なのか貫通なのかがわからなくなりますが、TENETの劇中のルールの場合は傷を付けた物体そのものが貫通して完全に通り過ぎない場合は着弾扱いになってるんだと思います。なのでこの場合は結果が過去に向かって残ることになり、順行目線で見ると刺された相手は徐々に大怪我を負い始め、刺されると傷が消えるという流れになります。
この場合だと刺された相手の傷から出た血も逆行の動きをするようになり、順行目線では刺された人の血が現場に最初からあったというパラドックスが起きます。また刺し傷が原因で死亡してまえば、刺された人は母親から産まれて今まで育ってきたという事実が消滅してしまうので、「刺された人はどこの誰?」というパラドックスも起きます。
しかし、逆行人間が使ったナイフが順行だった場合は、また話が違ってきます。この場合だと、逆行人間は相手が刺されて負傷してるところを先に見ます。刺すと相手の傷は消えます。
これは相手を斬りつけた場合や、切断した場合でも同じだと思います。
逆行弾を弓と矢に置き換えても理屈は同じだと思います。
また、カーチェイスシーンで逆行主人公が運転していたSAABですが、あれは順行の車ではないかと考えています。
たしかに、フリーポートの逆行マシンの順行側の部屋にカバーがかけられた車が置かれてましたが、あれがSAABという確証はありません。
逆行主人公が運転していたSAABが順行であると示唆しているシーンが何箇所かありました。
逆行主人公が車を急発進させるシーンが2回あるんですが、車は前に進んでるのにタイヤは逆方向行に回転していました。また、道路を走ってる時に一般車と接触するシーンがありましたが、逆行主人公目線で見ると破損部分が戻っています。車も逆行させてるのであれば、接触して破損すれば結果は過去に向かって残るはずです。
また、逆行セイターが横転した逆行主人公のSAABの燃料に引火させて爆発させましたが、主人公と車がみるみる凍ったということは、あの燃料は順行だったという事です。仮にSAABごと逆行させていたら、燃料も逆行してるので、「逆行セイターが逆行ライターで逆行燃料に引火させた」ので、逆行主人公は冷却ではなく燃焼で負傷することになります。
TENETでは「逆行が順行物に干渉すると順行物が逆行の動きになる」というルールがありますので、あのSAABは逆行主人公の時間軸に干渉されて逆行の振る舞いをしていた、ということになります。
またカーチェイス時に3台が並走しているのにも意味があります。
BMWは順行人間が順行車を運転していて、真ん中のSAABは逆行人間が順行車を運転していて、アウディは逆行人間が逆行車を運転している、という真ん中のSAABを起点に対の構図になっています。
まとめると、貫通した窓ガラス以外は傷が残る方向に矛盾はありませんが、傷が過去に向かって残った場合のみパラドックスになっているという事になります。
またまたコメントありがとうございます!
気になったところが二点だけ。
まず因果の逆転に関して。
大部分では納得できるのですが、組み合わせによってはパラドックスが起きる可能性があるというのは、「人および凶器の順行/逆行、着弾/貫通の組み合わせによって因果の逆転が生じるかが変わる」という劇中の描写がそもそも矛盾しているからなのでは?とも思ってしまいます。
もう一点は、「車は前に進んでるのにタイヤは逆方向に回転していた」という描写がSAABが順行物だと示唆しているという点。
逆にぼくは、あの描写がまさにSAABが逆行物であることを示している証拠だと思いました。
劇中の説明では「逆行時には摩擦が逆になる」とあり、逆行車が前進するためにはタイヤが通常とは逆の回転をする必要があるからです。
もし車が順行物であるなら、車の進行とタイヤの回転は同じ向きであるはずです。
こんにちは。返信していただきありがとうございます。
順行と逆行の傷の関係では、たしかにそれ自体が矛盾していると思います。エントロピーを減少させる技術は存在しないので検証しようがありませんが、劇中のルールを整理すると、空港の逆行マシンの検証窓だけがルールと違っているという結論でした。
おそらく主さんの仰る通り、全てルール通りにしてる訳ではなく、絵面を優先させてる面もあると思いました。
カーチェイスのSAABの件は、他の要素を考慮に入れると、やはり順行車だったと思われます。
セイターの逆行している部下が逆行アウディを運転している時は、逆になってる摩擦抵抗の影響を受けずに運転しているような感じでした。あれは逆行人間が逆行車を運転していたので、逆になっていたのは風圧抵抗のみだったからだと思われます。抵抗が風圧のみなら追い風を受けながら走行してるのと同じなので、運転に支障はあまりありません。
しかし、逆行主人公が運転していたSAABは少し状況が違う感じでした。
逆行人間が順行車を運転した場合、Dレンジに入れると後ろ向きに走り出すことになります。逆行主人公はあのシーンが初逆行だった上、逆行の基本ルールしか説明を受けてなかったので、全てが逆になるという現象には慣れてないはずです。
そのため逆行主人公はDレンジに入れて車を発進させたはずですが、SAABは逆行主人公の時間軸に引っ張られて本来とは逆の動きになりました。
あれは逆行弾に例えるなら、「着弾し続けてる状態」、すなわち”順行物が逆行側に干渉されている状態”ということになります。
こう整理すると、車の進む方向とタイヤの向きが逆になっていた事と、逆になっている摩擦抵抗と風圧抵抗に戸惑いながら運転していた説明がつきます。
また逆行主人公が運転中に一般車に衝突するシーンがありましたが、順行目線で見ると後ろ向きに走ってきたSAABに衝突されて破損したという流れになってましたが、SAABも逆行させてあった場合は流れが違います。
SAABも逆行だった場合、順行目線で見るとぶつけられた車は最初から壊れていたことになり、逆行主人公のSAABが衝突すると、衝突部分は復元されSAABが後ろ向きに去って行きます。
逆行主人公目線で見ると、一般車に衝突し破損、その結果がずっと過去に向かって残るという流れになるばずですが、劇中ではそうなってないのでSAABは順行だったという事になります。
>>セイターの逆行している部下が逆行アウディを運転している時は、逆になってる摩擦抵抗の影響を受けずに運転しているような感じでした
それは逆にアウディが順行車だった可能性があるということなのでは?
カーチェイスだけを見ればアウディは逆行車っぽいですが、逆行セイターと逆行ドライバーが乗り捨てた後(逆行視点では乗り込む前)が不可解なのでよくわからないんですよね。
アウディが逆行だった場合、逆行視点では、まずセイターの部下か誰かがハイウェイのあの場所に停車し、主人公とキャットが乗り込み、主人公がブレーキを押すと急発進し、主人公が降りてBMWと並走した後にセイターと部下が乗り込んだ、ということになります。
しかしそうなると、主人公がブレーキを押して急発進するというのはおかしい気がします。
ハイウェイのあの場所は坂道になっていましたから、主人公がブレーキを”放した”から発進したという見方も出来なくはないですが、完全に停止していたのに、ブレーキを押した途端に急発進してBMWと同じ速度で走行し出すというのは、どうにも無理がある気がします。
順行視点では乗り捨てられた後オートクルーズで走行を続けたというだけで問題ないので、あのアウディは順行で、逆行ドライバーが運転している間だけ逆行車のように振る舞っていたのかなと思いました。
SAABに関しては一旦、物理現象の描写云々を抜きにして考えてほしいのですが、TENETの世界において、時間軸上で人/物が生まれてから死ぬまでの軌跡は、基本的には1本の線になっていると思います(建物などこれと矛盾するものも登場しているでややこしいですが)。
そしてSAABが爆発よりも未来でフリーポートに停車していたという事実がある以上、SAABが順行だとすると辻褄が合わなくなります(製造から爆発までの過程が説明できなくなるため)。
したがって、SAABは逆行車だと思います。
こんにちは。
>それは逆にアウディが順行車だった可能性があるということなのでは?
いえ、そうではありません。アウディが順行車だった場合は摩擦などが逆になるので運転しにくくなります。
>しかしそうなると、主人公がブレーキを押して急発進するというのはおかしい気がします。
劇中でも表現されていたように、逆行人間が順行してる物体に干渉すると順行物が逆行の動きをします。逆も同じです。
>そしてSAABが爆発よりも未来でフリーポートに停車していたという事実がある以上、SAABが順行だとすると辻褄が合わなくなります(製造から爆発までの過程が説明できなくなるため)。 したがって、SAABは逆行車だと思います。
これも劇中で表現されてるパラドックスの一つで、初めから穴が空いていた順行の検証窓、初めからサイドミラーが壊れていた順行のBMW、初めから下の階が壊れていたスタルスクの順行のビルと同様、SAABも”初めから壊れていた状態”から始まり、道路でひっくり返った時間がやってくると復元し後ろ向きに走り出すという流れです。
なのでSAABは逆行ではなく順行ということになります。
コメントありがとうございます。
それらはすべて逆行の干渉によってモノに付いた傷の描写であって、モノ自体がいきなり出現したわけではありせんよね。
前に書いた通り、全てのモノには始まりと終わりがあり、時間軸上での軌跡は一本の線で描かれています。
爆発によって生まれた車という状況は起こり得ないので、SAABは逆行車であるという以外にはやはり考えられません。