疑問ポイントと考察
アルゴリズムが起動したらどうなっていたのか
どう考えても明確な答えがでないのがこれです。
アルゴリズムが起動して全世界のエントロピーが逆転することで、なぜ過去の人間が死滅し、未来人だけが得をするのか、いまいち理解ができません。
そもそもアルゴリズムとは、未来の科学者が作り出した「物理的形状を持った”ある手順”」のことでした。
アルゴリズムを起動することによって、世界全体のエントロピーの流れが逆転します。
”ある手順”ということは、このアルゴリズムのパーツ1つ1つがソースコードの断片のようになっているということなのかな。
劇中の説明に基づくと、アルゴリズム起動によって、以下のことが起こることが分かります。
- アルゴリズム起動よりも過去の存在が消滅する
- 未来人は豊かな環境を取り戻す
まず1つめ。
これはオスロ空港に向かうコンテナの中で、ニールが説明しています。
回転ドアによって少数の生命や物体のエントロピーの流れが逆転するだけなら問題ないが、全世界のありとあらゆるもののエントロピーの流れが逆転することによって、時間の矢の絡み合いが強大になり、その結果アルゴリズム起動時よりも過去の存在が瞬時に抹消される。みたいな感じの事を言っていたと思います。
アルゴリズムが起動する
↓
それよりも過去に存在していた世界全体の一瞬一瞬が回転ドアにぶち込まれた状態になる
↓
その一瞬一瞬で順行と逆行の重なり合いが発生する
↓
膨大な量の時間の矢の絡み合いによって、対消滅のような現象が起きる
↓
未来人だけが生き残る
ということなのではないかなと。
少なくとも「世界が逆行すると息ができなくなるから死ぬ」ということでは無いことだけは分かります(もしそうなら「逆行世界では息が出来ないから死ぬ」と端的に説明すればいいだけなので)。
未来人の先祖を殺したら未来人の存在もなくなるのでは?という主人公の問に対して、未来人は先祖を殺しても自分たちの存在には影響がないと信じていると答えていました。
そこまで追い詰められるほどに、未来の環境は劣悪だったということなのでしょう。
ぼくが分からないのは、2つめ。
未来人はアルゴリズム起動によって過去にさかのぼり、まだ環境が豊かだった頃に戻ろうとしている、ということなんだろうというのは分かります。
でも、アルゴリズム起動以前の過去が消滅するってことは、結局豊かだった頃の地球も消滅するってことで、過去に遡ろうが未来人の住む世界は変わらないのでは?
過去の存在は死滅するけど、地球の環境は逆行してどんどん元に戻っていくという、未来人だけに都合がいいことが起こるということなのでしょうか?
う~む、イマイチ納得できません。
この世界では過去の改変は出来ない(もしくは改変できたところで、変わった未来を知覚できない)という設定でした。
アルゴリズムを起動することは過去を改変することそのものなので、主人公たちが存在している世界では、何がどうなってもアルゴリズムの起動は行われないということになります。
しかし同時に、アルゴリズムの起動によって未来人が勝利した世界線が生じているということなのかもしれませんね。
順行と逆行の接触で生じる傷の描写問題
カーチェイスのときに、順行と逆行の接触で生じる傷の描写が、非常に大きな問題を引き起こしていると書きましたが、それについて考察していきたいと思います。
劇中で、順行と逆行の接触で生じた傷は以下の4つ。
- BMWのドアミラー
- 逆行弾で撃たれたキャットのお腹
- 順行主人公に刺された逆行主人公の腕
- 順行ヴォルコフに撃たれたニールの頭
順を追って見ていきましょう。
ハイウェイで241の奪取に成功しBMWに乗り込んだ主人公は、サイドミラーが割れていることに気づきます。
そしてこのサイドミラーの破損は、逆行してきたセイターが乗る車と衝突したときに直ります。
このことから、順行側が逆行側によって傷を負うと因果の逆転現象が起こるらしい、というのが分かります。
つまり、いきなり傷がある状態から始まり、傷を負う原因となった瞬間をすぎると傷が治る、ということです。
つぎに、キャットの傷。
先にガラスに弾痕があり、そこから弾が飛び出してキャットのお腹を貫通します。
キャット視点でみると、ガラスに埋まっていた弾が、お腹を貫通し、セイターの中に戻ったという現象。
セイターの視点で見ると、キャットのお腹を撃つと、お腹の傷が治っていき、弾がガラスに埋まるという現象になっています。
このシーンを単体で見るとおかしくないのですが、ドアミラーの例に則って考えるとおかしくなってきます。
順行側が逆行側によって傷を負うと因果の逆転現象が起こるのなら、キャットはセイターと共に車の中にいる時すでに出血しており、弾が貫通した瞬間に傷が治らなければおかしいですよね。
しかし、ガラスの視点になってみると、因果の逆転現象は成立しています。
無理やり理屈をつけるのなら、キャットは弾丸の通過点に立っていただけなので、因果の逆転現象が適用されなかった、ということなのかもしれません(しかし、貫通している場合としてない場合で考え方を変えないといけないというのも変な話です)。
では逆行主人公の腕の傷はどうでしょうか。
コンテナの中で主人公の腕に突然傷ができ、傷が悪化して出血、順行主人公に刺されると傷が治るという現象が起きます。
このことから、どうやら逆行側が順行側によって傷を負うとこれもまた因果の逆転現象が起こるらしい、というのが分かります。
しかしこの因果の逆転現象は、とんでもなく大きな問題をはらんでいます。
逆行主人公の腕の傷はただの刺し傷だったからよかったものの、例えばこれが腕の切断だった場合はどうなっていたのでしょうか。
気づいたら腕がなくなっていて、腕を切断される瞬間に治る…と考えるのはかなり無理がありますよね。
死に至る傷の場合も同様で、気づいたら死んでいて、傷を追う瞬間に治るということは、つまり不死身ということになってしまいます。
となると、逆行と順行の接触では、致命的なダメージはどうやっても絶対に与えられないのでは?
しかし、ニールは逆行中に順行のヴォルコフに殺されています。
しかも彼の場合はもっと厄介です。
なぜかというと、弾丸が貫通していないから。
ニールは頭蓋に弾丸が埋まったままずっと行動しており、死ぬ瞬間に弾が頭蓋からヴォルコフの銃に戻る、という非常に不思議な死に方をすることなります。
上述した因果の逆転現象に則れば、ニールは撃たれるよりも前に死亡しており、撃たれた直後に生き返らないとおかしいですよね。
じゃあどうやってニールはあの場所にたどり着いたんだ?という。
ニールの死を成立させるためには、以下のように考えるしかありません。
まず、ヴォルコフ視点で見るとすでにヴォルコフの銃で撃たれてニールが死亡している、という結果が起こっている。
つまり、このときすでにヴォルコフの銃から弾が一発なくなっており、その弾はニールの頭に埋まっている。
そして時が進み、ニールが起き上がり、弾がヴォルコフの銃に戻る。
※順行銃と逆行銃が同じ振る舞いをしているのは明らかにおかしいですが、そう考えないと、死ぬ瞬間までニールは頭に銃弾が埋まった状態で行動していることになってしまう
物と物が接触した場合、弾が貫通した場合としなかった場合、銃ではない凶器で傷を追った場合、とそれぞれの場合でルールが一定じゃないというか、どう考えても矛盾しているように思えます。
ん~…降参!
これはノーランの致命的なミス、ということにして決着をつけたいと思います。
その傷はいつからあったのか問題
オスロ空港フリーポートのガラスやドアミラーは、主人公が気づいたときにはすでに破損していましたが、ではこの破損は一体いつからあったのでしょうか。
オスロ空港のフリーポートに転がっていた銃も、タリンのフリーポートの弾痕も、ニールの死体もいつからあそこにあったのでしょうか。
フリーポートが作られるときから穴が空いていた、BMWが製造されたときからすでにドアミラーが割れていた、と考えるのはさすがに無理がありますよね。
これらのことは全て、量子論における状態の重ね合わせが、マクロの世界でも適用されているのだと考えると解決できます(詳しくはググってください)。
順行と逆行の干渉によって生じた結果は、その結果がある状態とない状態が重なり合っていて、当事者が観測することで初めてその場に確定する、という現象が起きているのだと考えられます。
つまり、オスロでの弾痕や分解された銃、ドアミラーの破損は、主人公たちが観測して初めてそこに確定したが、それ以前には存在しなかったということです。
スタルスク12で順行と逆行の同時攻撃によって破壊されたビルも同様で、あの作戦が行われるよりも前にはビルは普通に建っていたが、陽動作戦を実行する段階で半壊した状態になったと。
ものすごい無理やりですが。
こう考えると、ニールの頭の弾丸も死ぬ寸前に頭蓋の中に出現し、そこからヴォルコフの銃に戻っていったのでしょうか…?
なぜニールは鍵を閉めたのか
ニールが最後の逆行でとった行動は、ニール視点では一見すると不可解なものになっています。
まず、坑道に入り(あの時点で坑道の入り口は塞がれていたはずなのに、ニールはどこから入ったのか?)、主人公たちがヴォルコフと戦っているところを目撃。
そして鉄格子の向こう側に入り、主人公とアイブスが出ていったら鍵を閉めて、主人公をかばって撃たれて死にます。
したがってニール視点では鉄格子は既に開いていたということになり、主人公たちが鉄格子に阻まれたのはニールが鍵を閉めたから、ということになり、一見するとニールの行動が不可解に思えます。
では仮にニールが逆行をしなかったなら、主人公たちが鉄格子に阻まれることはなく、そしてニールも死ぬことはなかったのでしょうか?
それはおそらく無いと思います。
主人公たちが到着するときに鍵が開いていたなら、ヴォルコフがそれに気づいて鍵を閉められてしまいます。
そしてニールがいないので主人公をかばう人も鍵を開ける人も存在せず、アルゴリズムの回収は成立しなかった。
そう考えたからこそ、ニールは逆行せざるを得なかったのではないでしょうか。
ニール=マックスなの?
ニールの正体は未来から来たマックスだ、という説を巷でよく見かけます。
- マックスの本名は劇中では明かされていないが、実はMaximilienで逆さから読むとNeil(ニール)だから
- 髪の色が似ているから
- キャットに似てオシャレだから
- キャットをずっと看病しているのはニールだから
- ニールがバックパックにつけていたのが、ベトナムのお守りに似ているから
というのが主に根拠として挙げられています。
名前に関してはMaximでもMaxwellでもマックスなのでちょっとこじつけ感がありますが、それ以外では確かにマックス=ニールなのかも?と思わせるものです。
なるほど、と思いつつもぼく自身はニール≠マックスだと思っています。
上記のニール=マックスを匂わせる要素は、ノーランがそう思わせるためにわざとらしく入れただけなんじゃないかと。
そもそもぼくは、ニールが未来から逆行してきた人だとは考えていません。
その理由はハッキリしていて、ニールが別れ際に主人公に「きみの未来は過去にある(You have a future in the past.)」と言っているからです。
この「a future」というのは主人公から見て未来ということですが、「the past」は時間軸上における過去ということ。
つまり、主人公とニールは時間軸上で言えば過去で出会うけど、主人公から見ればそれはまだ起こってない未来の出来事、ということを示唆しています。
もしニール=マックスなのだとしたら、マックスが修士号を取った後すぐに10年ほどずっと逆行していかなければ計算が合わなくなりますが、10年間ずっと逆行を続けるというのはちょっと非合理的かつ非現実的ではないですか?
そもそも、キャットとマックスの命を救った主人公が、過去の自分を助けるためにマックスをTENETに引きずり込む、というのが主人公のキャラ的に考えにくいんですよね。
ここまで、無関係の人はなんとしても助けることを信条にしていた主人公が、無関係なまま育ったマックスを、最後に自分のために死ぬと分かっていながらリクルートするって、ちょっと非情すぎやしませんか。
ニールはまた「これは君の壮大な時間挟撃作戦だった」と言っていましたよね。
思い出してほしいのですが、セイターがタリンで挟撃作戦を行った際、全ての情報を持っていたのは時間軸上で言えば過去にいる逆行セイターでした。
これと同様に、アルゴリズムの回収を終えた主人公が過去にさかのぼって、来るセイターとの戦いに備えて「TENET」を組織し、その過程でニールと出会ったのではないでしょうか(ニールもまた、主人公と同様の試験でリクルートされた)。
ここからはぼくの妄想ですが、主人公はニールといくつもの戦いを経て親友になっていきますが、任務中にニールをかばって死亡してしまいます。
ニールは命の恩人であり親友だった主人公を助けるために、オペラハウスで、オスロ空港で、タリンで、そしてスタルスク12で命をかけて主人公のために戦ったのです。
少なくとも、未来の主人公が、過去の自分の代わりに死んでもらうためにマックスに接近し、過去に送り出すという非情な判断を下したというよりは断然筋が通っていますし、綺麗な因果のループにもなっていると思うのですがどうでしょうか。
セイターにアルゴリズムを送ったのは主人公だった?
アルゴリズムを開発した科学者は、その力の強大さ故に悪用されることを恐れ、9つのパーツにばらして過去に隠し、自らは自殺。
アルゴリズムを封印しておく場所として、長期間誰の手にも触れられず、かつ厳重に管理されている施設ということで、長期核保有施設が選ばれました。
そしてソビエトの崩壊と重なって、秘密都市スタルスク12の核施設に保管されていたアルゴリズムの1つが、セイター少年の手に渡ることになります。
ちょうどいい時と場所にいたセイター少年は、プルトニウム採掘作業中にアルゴリズムのパーツの1つを発見し、一緒に入っていた金塊、そして未来からの契約書・指示書によって成り上がりました。
ということは、セイターが初めに発見したアルゴリズムのパーツは、開発者が隠したものではないということになります。
なぜなら、開発者の目的はアルゴリズムを過去永劫隠しておくことであり、揃えて未来に送り返してもらうことではないからです。
では、このアルゴリズムのパーツをスタルスク12に隠した人物は誰だったのでしょうか。
これは完全な憶測ですが、このアルゴリズムのパーツがセイターに見つかるように隠したのは主人公だったのではないでしょうか。
パーツと一緒に入っていた契約書・指示書には、なぜかセイターの名前が書かれていました。
つまりこれを書いた人物は、あの場所でアルゴリズムを掘り出すのがセイターであることを知っており、しかもアルゴリズムを所有していた人物ということになります。
そして、スタルスク12でアルゴリズムの回収に成功した主人公は、どちらの条件も満たしています。
これを思いついたとき、ニールが言っていた「壮大な挟撃作戦」とは、主人公がアルゴリズムをループのなかに閉じこめる作戦だったのか!と一瞬興奮したのですが、そもそもアルゴリズムは未来から送られてきたものという設定なのでこのロジックにも矛盾がありますね。
コメント
こんにちは。 サイトの解説記事を読ませていただきました。
自分も順行と逆行の傷の因果関係には興味がありました。自分なりに考えて出した結論があります。
結論から書きますと、ノーラン監督が描いた傷の因果関係は一部を除き矛盾してません。
逆行側が付ける傷は単純に、「順行物に傷を付けた物体が着弾したか貫通したか」によって傷が未来に向かって残るか過去に向かって残るかが決定されます。
逆行する物体が順行物に着弾すると、結果が過去に向かってのこり、逆行する物体が順行物を貫通すると結果が未来に向かって残ります。
仮に逆行弾で逆行人間を撃って弾が貫通し向こう側の順行の壁に着弾した場合は、どちらも結果が過去に向かって残ります。順行目線で見ると逆行人間と壁は復元されます。
主人公とニールが乗っていたBMWのサイドミラーは、アウディにぶつけられて、その結果が過去に向かって残ってました。という事はあのアウディは車ごと逆行させてあったということになります。
キャットの腹が撃たれた時は、逆行弾が貫通したので撃たれた結果が未来に向かって残りました。仮に貫通せず腹に着弾してた場合、キャットの腹の中には初めから弾丸が存在してた事になります。もっと言えばキャットが生まれる前からキャットの腹の中に弾丸があったという意味不明な状態になります。
また、空港で主人公が逆行主人公と取っ組み合いしてた時に主人公が逆行主人公の腕に突起物を刺してましたが、突起物は貫通せず着弾したので結果が未来に向かって残りました。逆行主人公からすると傷が最初に現れて刺されると傷が消えます。劇中の描写の通りでした。
この理屈通りだと、矛盾してるのは空港の逆行マシンの部屋にあった検証窓という事になります。あの窓ガラスは逆行弾が貫通しただけなので、結果が過去に向かって残ってるのはおかしいです。本来であれば未来に向かって残ります。
ニールが検証窓の弾痕を見て触ろうとするシーンはポスターにもなってましたが、あの窓の弾痕は間違いだということになります。
結果が過去に向かって残ってるのは、逆行弾が着弾してるであろう順行側の部屋の壁です。
ベケットさん、コメントありがとうございます!
楽しく読ませていただきました。
そこで疑問に思ったことがあります。
「傷を付けた物体が着弾したか貫通したか」というのは、「傷を付けた物体が傷表面に留まっているか否か」と言い換えることが出来ると思うのですが、とするとBMWのミラーと逆行主人公の腕の傷は着弾ではなく貫通となり、別の矛盾を招いてしまわないでしょうか。
もし言い換えることが出来ないのであれば、着弾と貫通の定義が曖昧な気がします(空港での刺し傷は着弾、では切り傷だったら?骨折だったら?腕が切り落とされていたら?などなど)。
因果の逆転現象は、映画内の描写ではどう考えても矛盾が生じてしまう問題だと思います。
「傷を付けた側の主観では因果の逆転現象が生じる」というルールであれば矛盾を回避できたはずなのですが、そうすると傷を付けられた側から見てなんの面白みもない画になってしまうので、ノーラン監督は矛盾が生じることを承知の上であえて画的な面白さを優先したのだろう、というのがぼくの最終的な結論です。
こんにちは。
BMWのドアミラーの場合は、物体を貫かずに当たった後通り過ぎてるので、結局は着弾扱いになってるんだと思います。
貫通でも「物体が当たって通り過ぎる」という点では同じですが、そこに”貫いてる”という要素も加わるため、因果関係の逆転が起こるのだと思います。
たしかに着弾と貫通の定義は曖昧だと思います。仮に、逆行人間が刃渡りの長い逆行ナイフで相手の腕を刺して刃の部分は貫通したけどそのままナイフを引き抜いてしまった場合、着弾なのか貫通なのかがわからなくなりますが、TENETの劇中のルールの場合は傷を付けた物体そのものが貫通して完全に通り過ぎない場合は着弾扱いになってるんだと思います。なのでこの場合は結果が過去に向かって残ることになり、順行目線で見ると刺された相手は徐々に大怪我を負い始め、刺されると傷が消えるという流れになります。
この場合だと刺された相手の傷から出た血も逆行の動きをするようになり、順行目線では刺された人の血が現場に最初からあったというパラドックスが起きます。また刺し傷が原因で死亡してまえば、刺された人は母親から産まれて今まで育ってきたという事実が消滅してしまうので、「刺された人はどこの誰?」というパラドックスも起きます。
しかし、逆行人間が使ったナイフが順行だった場合は、また話が違ってきます。この場合だと、逆行人間は相手が刺されて負傷してるところを先に見ます。刺すと相手の傷は消えます。
これは相手を斬りつけた場合や、切断した場合でも同じだと思います。
逆行弾を弓と矢に置き換えても理屈は同じだと思います。
また、カーチェイスシーンで逆行主人公が運転していたSAABですが、あれは順行の車ではないかと考えています。
たしかに、フリーポートの逆行マシンの順行側の部屋にカバーがかけられた車が置かれてましたが、あれがSAABという確証はありません。
逆行主人公が運転していたSAABが順行であると示唆しているシーンが何箇所かありました。
逆行主人公が車を急発進させるシーンが2回あるんですが、車は前に進んでるのにタイヤは逆方向行に回転していました。また、道路を走ってる時に一般車と接触するシーンがありましたが、逆行主人公目線で見ると破損部分が戻っています。車も逆行させてるのであれば、接触して破損すれば結果は過去に向かって残るはずです。
また、逆行セイターが横転した逆行主人公のSAABの燃料に引火させて爆発させましたが、主人公と車がみるみる凍ったということは、あの燃料は順行だったという事です。仮にSAABごと逆行させていたら、燃料も逆行してるので、「逆行セイターが逆行ライターで逆行燃料に引火させた」ので、逆行主人公は冷却ではなく燃焼で負傷することになります。
TENETでは「逆行が順行物に干渉すると順行物が逆行の動きになる」というルールがありますので、あのSAABは逆行主人公の時間軸に干渉されて逆行の振る舞いをしていた、ということになります。
またカーチェイス時に3台が並走しているのにも意味があります。
BMWは順行人間が順行車を運転していて、真ん中のSAABは逆行人間が順行車を運転していて、アウディは逆行人間が逆行車を運転している、という真ん中のSAABを起点に対の構図になっています。
まとめると、貫通した窓ガラス以外は傷が残る方向に矛盾はありませんが、傷が過去に向かって残った場合のみパラドックスになっているという事になります。
またまたコメントありがとうございます!
気になったところが二点だけ。
まず因果の逆転に関して。
大部分では納得できるのですが、組み合わせによってはパラドックスが起きる可能性があるというのは、「人および凶器の順行/逆行、着弾/貫通の組み合わせによって因果の逆転が生じるかが変わる」という劇中の描写がそもそも矛盾しているからなのでは?とも思ってしまいます。
もう一点は、「車は前に進んでるのにタイヤは逆方向に回転していた」という描写がSAABが順行物だと示唆しているという点。
逆にぼくは、あの描写がまさにSAABが逆行物であることを示している証拠だと思いました。
劇中の説明では「逆行時には摩擦が逆になる」とあり、逆行車が前進するためにはタイヤが通常とは逆の回転をする必要があるからです。
もし車が順行物であるなら、車の進行とタイヤの回転は同じ向きであるはずです。
こんにちは。返信していただきありがとうございます。
順行と逆行の傷の関係では、たしかにそれ自体が矛盾していると思います。エントロピーを減少させる技術は存在しないので検証しようがありませんが、劇中のルールを整理すると、空港の逆行マシンの検証窓だけがルールと違っているという結論でした。
おそらく主さんの仰る通り、全てルール通りにしてる訳ではなく、絵面を優先させてる面もあると思いました。
カーチェイスのSAABの件は、他の要素を考慮に入れると、やはり順行車だったと思われます。
セイターの逆行している部下が逆行アウディを運転している時は、逆になってる摩擦抵抗の影響を受けずに運転しているような感じでした。あれは逆行人間が逆行車を運転していたので、逆になっていたのは風圧抵抗のみだったからだと思われます。抵抗が風圧のみなら追い風を受けながら走行してるのと同じなので、運転に支障はあまりありません。
しかし、逆行主人公が運転していたSAABは少し状況が違う感じでした。
逆行人間が順行車を運転した場合、Dレンジに入れると後ろ向きに走り出すことになります。逆行主人公はあのシーンが初逆行だった上、逆行の基本ルールしか説明を受けてなかったので、全てが逆になるという現象には慣れてないはずです。
そのため逆行主人公はDレンジに入れて車を発進させたはずですが、SAABは逆行主人公の時間軸に引っ張られて本来とは逆の動きになりました。
あれは逆行弾に例えるなら、「着弾し続けてる状態」、すなわち”順行物が逆行側に干渉されている状態”ということになります。
こう整理すると、車の進む方向とタイヤの向きが逆になっていた事と、逆になっている摩擦抵抗と風圧抵抗に戸惑いながら運転していた説明がつきます。
また逆行主人公が運転中に一般車に衝突するシーンがありましたが、順行目線で見ると後ろ向きに走ってきたSAABに衝突されて破損したという流れになってましたが、SAABも逆行させてあった場合は流れが違います。
SAABも逆行だった場合、順行目線で見るとぶつけられた車は最初から壊れていたことになり、逆行主人公のSAABが衝突すると、衝突部分は復元されSAABが後ろ向きに去って行きます。
逆行主人公目線で見ると、一般車に衝突し破損、その結果がずっと過去に向かって残るという流れになるばずですが、劇中ではそうなってないのでSAABは順行だったという事になります。
>>セイターの逆行している部下が逆行アウディを運転している時は、逆になってる摩擦抵抗の影響を受けずに運転しているような感じでした
それは逆にアウディが順行車だった可能性があるということなのでは?
カーチェイスだけを見ればアウディは逆行車っぽいですが、逆行セイターと逆行ドライバーが乗り捨てた後(逆行視点では乗り込む前)が不可解なのでよくわからないんですよね。
アウディが逆行だった場合、逆行視点では、まずセイターの部下か誰かがハイウェイのあの場所に停車し、主人公とキャットが乗り込み、主人公がブレーキを押すと急発進し、主人公が降りてBMWと並走した後にセイターと部下が乗り込んだ、ということになります。
しかしそうなると、主人公がブレーキを押して急発進するというのはおかしい気がします。
ハイウェイのあの場所は坂道になっていましたから、主人公がブレーキを”放した”から発進したという見方も出来なくはないですが、完全に停止していたのに、ブレーキを押した途端に急発進してBMWと同じ速度で走行し出すというのは、どうにも無理がある気がします。
順行視点では乗り捨てられた後オートクルーズで走行を続けたというだけで問題ないので、あのアウディは順行で、逆行ドライバーが運転している間だけ逆行車のように振る舞っていたのかなと思いました。
SAABに関しては一旦、物理現象の描写云々を抜きにして考えてほしいのですが、TENETの世界において、時間軸上で人/物が生まれてから死ぬまでの軌跡は、基本的には1本の線になっていると思います(建物などこれと矛盾するものも登場しているでややこしいですが)。
そしてSAABが爆発よりも未来でフリーポートに停車していたという事実がある以上、SAABが順行だとすると辻褄が合わなくなります(製造から爆発までの過程が説明できなくなるため)。
したがって、SAABは逆行車だと思います。
こんにちは。
>それは逆にアウディが順行車だった可能性があるということなのでは?
いえ、そうではありません。アウディが順行車だった場合は摩擦などが逆になるので運転しにくくなります。
>しかしそうなると、主人公がブレーキを押して急発進するというのはおかしい気がします。
劇中でも表現されていたように、逆行人間が順行してる物体に干渉すると順行物が逆行の動きをします。逆も同じです。
>そしてSAABが爆発よりも未来でフリーポートに停車していたという事実がある以上、SAABが順行だとすると辻褄が合わなくなります(製造から爆発までの過程が説明できなくなるため)。 したがって、SAABは逆行車だと思います。
これも劇中で表現されてるパラドックスの一つで、初めから穴が空いていた順行の検証窓、初めからサイドミラーが壊れていた順行のBMW、初めから下の階が壊れていたスタルスクの順行のビルと同様、SAABも”初めから壊れていた状態”から始まり、道路でひっくり返った時間がやってくると復元し後ろ向きに走り出すという流れです。
なのでSAABは逆行ではなく順行ということになります。
コメントありがとうございます。
それらはすべて逆行の干渉によってモノに付いた傷の描写であって、モノ自体がいきなり出現したわけではありせんよね。
前に書いた通り、全てのモノには始まりと終わりがあり、時間軸上での軌跡は一本の線で描かれています。
爆発によって生まれた車という状況は起こり得ないので、SAABは逆行車であるという以外にはやはり考えられません。