『Twelve Minutes』の感想を。前半は面白いけど後半はモヤッとするタイムリープスリラー

今回は、SteamおよびMS Store(Game Pass対応)でリリースされた『Twelve Minutes』の感想をお届けします。

ぼくはXbox Series Xでプレイしました。

全実績解除済みですが、ある実績・エンディングは攻略情報を見ないと分かりませんでした。

ジャンルトップダウン型インタラクティブ・スリラー
開発元Luis Antonio
発売元Annapurna Interactive
総プレイ時間約7時間
おすすめ度★★★☆☆

ストーリー

妻の待つアパートへと帰宅し、幸せなひとときを過ごしていた主人公。
そこに突如、警察を名乗る男が押し入り2人は拘束され、為すすべもなく殺されてしまう…
しかし自分は死んでおらず、帰宅した直後まで時間が戻っていることに気付く。
警察と名乗る男の目的は何なのか?どうすればこのタイムリープから抜け出せるのか?
繰り返される時間の中で、次第に浮き上がってくる真相とは。

というのが本作のあらすじ。

いろんなアプローチからタイムリープを繰り返していくうちに少しずつ物語が紐解かれていくので、やめ時がわからないぐらいには楽しめました(ただし後半の展開にはかなり不満があります)。
主人公を演じるジェームズ・マカヴォイ、妻を演じるデイジー・リドリー、警察を演じるウィレム・デフォーとキャストが豪華。さすがの演技で説得力があります。

全体的にはかなり没入感が高い作品ですが、状況と言動が合っていない部分やつなぎが不自然な部分が見受けられ、没入感が削がれてしまう場面がところどころあった点が惜しいと感じました。

ネタバレを避けながらストーリーに言及するのは難しいのですが、後半に待ち受ける”どんでん返し”とオチは個人的に好きじゃなかったです。
後味も決して良いものではないので、万人に勧められるものではないかなと思います。

ゲームプレイ

リビングダイニングキッチン、バスルーム、寝室、クローゼットを行ったり来てして、アイテムを探したり、アイテムを使ったり、妻にアイテムを渡したりと、様々な試行錯誤を繰り返しながら物語の真相を解き明かしていきます。
ポイント&クリックでキャラを動かしたりアイテムを取ったり使ったりするので、コントローラーだとやや操作がしにくく、できればPCで遊んだ方がいいのかなと思います。

さまざまなアプローチを試して、死んで学んで次に活かすというプレイ感覚はローグライクに近いと感じました。
舞台となるアパートは狭いですが、アイテムの使い方だったり会話の分岐だったりはかなりたくさん用意されていて、窮屈さを感じさせない作り。
特に序盤から中盤までは、とにかく何かすれば前回のループとは違う展開が待ち受けているので、ああしたらどうなるんだろう?こうしたら話が進むのでは?とループごとに試行錯誤するのがとても面白かったです。

ただしその面白さは長続きせず
終盤では同じ行動を繰り返さないと物語が進まないようになり、全く同じ会話を何度も聞かされるうえに一手間違えるとやり直しになってしまうため、かなり冗長に感じてしまいました。

タイムループのほかに、ゲームはリアルタイムで進行するというのも本作の大きな特徴。
ループ開始から5分後には必ず警察がやってきて、10分後には強制的に振り出しに戻されるので、考えたり迷ったりする猶予があまり与えられません。
これにより緊張感が生まれ、1ループがタイトにまとまっています。

しかし一方で、ループを繰り返すうちにテンポの悪さが気になってきます。
一部の会話は早送りできるものの、動作を早送りすることはできませんし、シーンを丸ごとすっ飛ばすこともできません。
警察がくるまでの時間をすっ飛ばしたり、ある行動を取ると必ず次のループに移行できたりするという仕掛けは一応用意されていますが、やはりゲーム後半では冗長さを感じてしまいます。

また人にもよるとは思いますが、ドツボにはまるとなかなか抜け出せません。
ゲーム内にはメモ機能的なものはないので、行動と結果の組み合わせを逐一記憶しておかなければなりません(新しい会話の選択肢は白く表示されるというのはありますが)。
主人公がループ開始時に独り言のようにヒントをくれる瞬間があるのですが、それを聞き逃したり閃かなかった場合、延々とループに囚われてしまうこともあるかもしれません。
そういう意味では、タイムリープに囚われる感覚を体験できるゲームとしての試みは成功していますが…

ストーリーの何が気に入らなかったのか

以下は完全にネタバレになりますので、閲覧にはご注意を。

ゲーム後半では、「主人公と妻は異母姉弟だった」「妻の父親を殺したのは主人公だった」という”どんでん返し”が待っています。
しかも、主人公がそのことを知らなかったわけではなく単に忘れていただけ。って、そんな重要なことを都合よく記憶から消し去っているというのにはかなり無理があります。
プレイヤーに衝撃を与えたいがための展開にしている感があってどうにも好きになれませんでした。
母親の名前がダリアだから異母姉弟とすぐさま結論づけるのも無理があります。
『バットマンvsスーパーマン』におけるマーサのくだりぐらい急すぎ。

オチが気に入らなかったのは、夢オチみたいなオチだったから。

  • 一番最初にアパートに入りそのまま何も操作しないと、勝手に妻との会話が進みループが発生せずに「傾聴」エンドを迎える。つまり本当は警察なんて来ていない(ループ内だと、妻がアパートから出ると必ず警察に引き止められる)
  • ゲームの進行度によって部屋に飾ってある絵が変わったり、寝室の花が咲いたりする
  • 警察と父親が同一人物。しかしそれに妻が気づかないはずがないので、そもそも警察なんて存在しない

これらのヒントと最後の父親との対峙で、このタイムループはすべて主人公の頭の中で起きた出来事だったことがわかります。
「自分と異母姉の間に子供ができてしまった」という事実がトリガーになり、良心の呵責がタイムリープという形で発動した。そういうことなのかな。
そこから「続き(都合の悪い記憶を消し去る)」エンドか「心を込めて(真実と向き合う)」エンドかに派生しますが、散々ループを重ねてきて最後がこれかよ…と思ってしまいました。

あと、心を込めてエンドは条件が分かりにくすぎないですか?
ここと「園芸人」の実績だけは攻略見ないと分かりませんでした。

おわり

色々文句を書いてきましたが、これをそのまま映画化しても成り立ちそうなゲームというか、プレイ後感は一本の映画を観た感覚に近かったです。

タイムリープを通して知識を蓄積し物語を紐解いていく、謎解き脱出ゲームのようなコンセプト自体は非常に面白く、事実中盤までは夢中でプレイしていましたが、後半の冗長さとストーリーの展開がどうにも好みではありませんでした。

Game Pass加入者にはいちおうオススメしますが、定価で買うにはちょいと高いかな…という感じでした。

コメント

  1. ループ より:

    姉を愛してしまったことを主人公は自責の念に駆られていて、それを父親に打ち明けるも、もちろん受け入れられず、カウンセラーである父のカウンセリングを受けている、という作品だと感じました。
    そしてそれぞれのループで自力で戻ってきた場合は、カウンセリングそのものを拒否していたり、すでに決心が付いた状態となり、父親(カウンセラー)に話すも、ときには本棚にぶつけてエンド。そして、姉を忘れる決心エンドでは、父と抱き合っていた・・のかなと思いました。
    妻もどこかのループで「気づいたらここにいた」と言っていたので、妻視点で考えても実は二人ともカウンセリングを受けている可能性もあるな、と思いました。面白いですね。