JRPGファンは全員プレイしたらいいかもしれない超大作『ゼノブレイド3』の評価・感想

『ゼノブレイド3』をクリアしたので評価・感想を書いておきます。

やめ時を見失う広大な世界

オープンワールドではないものの広大なフィールドが広がっていて、大量のサブクエスト、エリートモンスターの討伐、秘境の発見、といった探索要素が山ほど用意されています。

ちょっとだけ寄り道しようと思って未開拓な場所をウロウロしているとヒーロークエストに出くわし、その流れで関連クエストをクリアしていくうちにレベルが上がり、おかげでそれまで行けなかった場所の探索ができるようになって…という風に、グングンと横道に逸れていってしまうのがすごく楽しかったです。

サイドクエストにあたるノーマルクエスト・ヒーロークエストの総数はとてつもなく豊富。無限に出てくるんちゃうか?と思うぐらいに次々と発生していきます。
ただ単に多いだけではなくて、きちんとキャラの深堀りや世界観に厚みを持たせるような内容になっているので、前作とは打って変わって作業感を感じさせません。
メインクエストよりもむしろノーマル/ヒーロークエストのほうが本編だと思えるほどに作り込まれていたのでビックリしました。

主人公チームやヒーローキャラだけでなく、名ありのNPCにもきちんと個性があったり、細かく変化する会話やキズナグラム(相関図)によって、クエストを進行させることで世界に影響を及ぼしているという感覚を得られるようになっていたのも良かったです。

また、ヒーローをパーティーに入れてフィールドを探索していると、特殊な会話が生じることがあります。
ほんとうにちょっとした会話なのですが、キャラの人となりが垣間見えたり、過去にまつわることだったりするので、色んなヒーローを連れて歩くのが楽しかったです。

とにかく寄り道が楽しくて終始メインクエストの推奨レベルを余裕で上回ってしまい、メインボスとの戦いが全く歯ごたえのないものになってしまった点だけは残念。
クリア後にはレベルを下げることが出来るようになるのですが、これは最初からできるようにしてほしかったです。

スロースターターだけど楽しいバトル

戦闘システムのベースは、自動攻撃(オートアタック)の合間にリチャージ式の技(アーツ)を使いながら戦うというシンプルなものですが、合体(インタリンク)による巨大ロボ的な豪快アクション、特大ダメージを叩き込めるチェインアタックなどの要素によって、爽快感のある楽しい戦闘に仕上がっています。

が、主要システムがあらかた出揃うまでに15時間ぐらいかかり、序盤の5時間ぐらいはパーティが3人しかいないため、退屈に感じられる部分もありました。

  • アーツのリキャスト
  • アーツのキャンセル発動
  • ブレイクを起点とした2種のコンボルート
  • 敵味方の位置取り
  • クラス・ロールのバランスを考慮したパーティー編成
  • 2キャラが合体して強力なウロボロスに変身して戦う「インタリンク」
  • マスターアーツの組み合わせによる攻撃バリエーションの増加
  • クラスに合わせたスキル、アクセサリー、ジェムの構成
  • ずっと俺のターン的な「チェインアタック」
  • 融合アーツによるインタリンクの強化
  • ウロボロスの形態チェンジ、ウロボロスオーダー

といった、把握・管理しなきゃいけない要素が多くて複雑そうに見えるものの、慣れてしまえばチェインアタックやインタリンクを駆使して数十万を余裕で超えるダメージをドカドカ叩き込み、強敵を一方的にしばくことが出来て爽快。

前作のシステムより分かりやすく、バトルシステムを復習できる「訓練モード」も搭載されているため、よく分からないまま終わるということはなさそう。

難易度はノーマルでプレイしましたが、編成が適当すぎると苦戦する一方で、それなりに考えた編成なら通常雑魚はレベル差が5ぐらいあっても倒せるし、ユニークエネミーも同レベルであれば倒せるような、丁度いいバランスだと感じました。

楽しく仕上がっている戦闘システムですが、欠点が無いわけではありません。

クラスが自由に変更可能な分、各キャラの個性はほぼ死んでいる

クラスごとにロールや使えるアーツは異なりますが、クラスが同じならどのキャラを使っても立ち回りは一緒。
一応、キャラによって得意/苦手なクラスはありますが、致命的な差があるわけではありません。

キャラ固有のアーツを持っているのはノアとミオ、ヒーローキャラ、各キャラのインタリンク時だけで、そのうちヒーローは使用不可。
異なるクラスでも、同じロールであれば立ち回りは概ね同じになってしまうので、戦闘におけるキャラ・クラスの違いによる変化はあまり大きくはないです。

キャラの性能に縛られない自由な編成が可能な一方で、キャラの個性があまり感じられないようになっていたのは残念でした。

複雑そうに見えてワンパターンになりやすい

第3話を過ぎるとインタリンクとチェインアタックがバカみたいに強くなるので、融合アーツでインタリンクをレベル3にする→チェインゲージが貯まるまでインタリンクでシバく→チェインアタックでオーバーキル、というワンパターンな戦い方になりがち。

また、ジャスト回避やパリィといったテクニカルな要素は無く、敵の攻撃パターンを把握したり弱点を突いたりといった戦略的な要素も特にありません。

スマッシュ/バーストコンボが繋げるか、回復やヘイトの管理が円滑に行えるか、アーツの威力を最大限に引き出せるかなど、パーティー編成の段階では考えることが多い一方で、戦闘時に考えることがあまり無いという作りになっているため、好みが分かれそうです。

クラスの成長に面白みが無い

キャラのレベルと同じく、クラスにもランクがあり、戦闘を重ねることで成長していきます。

しかし、ランクアップしても「他クラス時に使用可能になるスキル・アーツが増える」「スキル・アーツの性能がちょっと良くなる」だけ。
初期状態から全てのアーツは使用可能ですし、「上位互換の強力なアーツを覚える」とか「ジェム・アクセサリの装備枠が増える」といった分かりやすい強化がなく、ポイントを消費して成長させるような要素もありません。

ひたすらクラスのランクをマックスにして別のクラスに切り替えるの繰り返しになってしまい、そこに面白みはありませんでした。

いまいち盛り上がれなかったストーリー

物語は独立しているので、本作がシリーズ初プレイでも問題はない…と言いたいところなのですが、1・2をプレイしたかしていないかで世界観や設定の理解、エンディングの印象がかなり変わると思います(ぼくは1をプレイしていないので、やっときゃ良かったなとちょっと後悔しました)。

ケヴェスとアグヌス、2つの国が終わりのない戦争を続けている世界、アイオニオン。
両国の兵士は、敵の命を奪うことでしか生きられない悲しい宿命を背負わされていた。
そんな中、敵対する国の兵士であるノア達とミア達が、戦場で運命的な出会いを果たすところから物語が動き出します。

前半は割と興味を惹くような展開になっていて楽しめたのですが、中盤あたりからなんだかワンパターンだなと思ってしまったり、今更そんな話する?と思ってしまったり、イマイチ盛り上がりに欠けるまま終わってしまったというのが正直な感想です(と言いつつ、エンディングではしっかり感動しちゃったんですけどね)。

また、ストーリー重視のゲームなので仕方がないとはいえ、イベントシーンの分量は多いし長すぎ。
いくらなんでも冗長だと感じられるシーンや、同じ話を何回もしてるな…と感じられるシーンもあったので、もうちょいテンポよくタイトにまとめてほしかったです。

主人公たちの動機が薄い

主人公たちの旅路には個人的な動機がほぼ無く、成り行きで背負わされた使命感だけで突き進んでいる感じがあり、応援も共感もしづらかったです。

また、ラスボスとの因縁は間接的なものですし、ラスボスと対面するのはラスボス戦が初めてというのも盛り上がりに欠ける要因かなと。

敵サイドに一切魅力がない

敵であるメビウスは、”永遠の今”を生きるために人の命を糧にしている存在。

クリスやトライデンといった例外はあれど、基本的にはケヴェス・アグヌスの対立煽りをすることで生き永らえている頭のおかしい人たちの集まり。

まともな対話や議論が成り立たず、主義主張にも深みがない(というかまともな描写がない)ため、彼らとの対峙には面白みがありませんでした。

老化を隠すためなのかヘルメットを付けたまま死んでいくメビウスばかりなので、全員見た目が似たり寄ったりで印象に残りづらい、というのもあります。

また、後半に行くにつれて処理が雑になっていっていくのもイマイチに感じました(エックス、ワイとの決着がものすごく雑に処理されたのは消化不良)。

思わせぶりな感じで結局よく分からないままだった設定が多い

識者の考察を見たり、DLCが配信されればはっきりすることもあるのかもしれませんが、少なくとも本編を終えただけでは、結局あれは何だったの?と思うような設定が多すぎました。

死に方で粒子の色が違うのはなぜ?

おくりびとはメビウスにとってなぜ必要だったの?

成人すると再生されない仕組みはメビウスにとってなぜ必要だったの?

メビウスは永遠の今を生きているのに老化している者がいるのはなぜ?

リクは結局何者だったの?

など、思わせぶりな感じで出てくるから後で説明されるんだろうな、と思っていた設定は特に語られず、モヤモヤだけが残りました。

悪い意味でアニメ感が強い

なんでも説明してくれる敵、死を恐れているくせに常に舐めプしてくれるメビウス達、一時を争う状況での演説大会、ターン制の会話・戦闘劇、大仰な台詞回し、実際のゲームプレイとはまるで別人のような超人的な動き、といった諸々の苦手な要素がイベントシーンに盛り込まれていて、見ていてちょっと恥ずかしくなるところがありました。

しょんぼりなラスボス

ラスボスの正体は『ペルソナ5』の二番煎じに感じてしまいました。

『ペルソナ5』の場合は設定的に納得度が高かったのですが、本作ではあまり納得できないというか、「あぁ、そう…」みたいなテンションに。

重箱の隅をつついてみる

その他、気になってしまった諸々の点を簡潔に。

  • チュートリアルがいくらなんでも丁寧すぎる
  • 大量のアクセサリーがズラッと1列に表示されるので目当てのものを探すのが大変すぎる
  • 相変わらず分かりにくい地図
  • フィールドには細かくロケーション名が付けられているのですが、地図上に表示されないためほとんど意味が無い
  • 戦闘画面がごちゃつき過ぎていて、集団戦になると何が何だか分からない
  • クエストの報酬がショボい
  • いくつかの素材の組み合わせを納品するクエストがかなり面倒
  • クエストの発生手順が二度手間で面倒くさい
    クエストの多くは、NPCの会話を立ち聞きする→休憩ポイントで相談する、という手順を踏まないと発生しないようになっていて面倒くさいです。また、クエスト発生のきっかけになるNPCの会話は地図上には表示されないので、章が進むたびに各コロニーを探索する必要があるのも面倒くさい。
  • 街らしい街がない
    無限に戦い続ける戦乱の世界という設定上仕方ないのかもしれませんが、本作には探索可能な街がほぼありません。コロニーと呼ばれる小規模な基地はチラホラと点在しますが、ちゃんとした街がいくつか存在していた前作と比べてひどく寂しく感じられます。
    RPGにおいて「人で賑わう探索可能な街」はかなり重要な要素だと思うのでこれは非常に残念でした。
  • 巨大エネミーとの戦闘がダルい
    アタッカークラスを使った戦闘では位置取りがかなり重要ですが、図体がデカい敵との戦闘時に側面や背面に回るのがすごく面倒。また、ヒーラーの回復技は自分の周囲を回復するものがほとんどなので、大きくバラけたアタッカーとディフェンダーをサポートしにくい。
  • 梯子、蔦を登るのが遅すぎる
  • 食事やジェム作成など、ちょこちょこあるテンポの悪い演出
  • 服装が変わるのが上半身だけ
    クラスを変更すると服装も変わるのですが、ごく一部のクラスを除いて、ズボンはどのクラスを使っても同じ。そのため、しっくりこない・似合わないファッションに見えるクラスも少なくなく、ちょっと手抜きに感じられます。
  • ヒーロー図鑑およびクラスメニューでのシルエットによるネタバレ
  • お金の使い道が全くと言っていいほど無い
  • 戦闘終了時の台詞のパターンが少なすぎる
  • 地上を移動する手段が徒歩のみ
  • チェインアタックの演出が長すぎてダレる

おわり

シリーズ集大成にふさわしい、とにかくやりごたえマックスなJRPG。
欠点はあるものの、クエストの数々や探索・戦闘は楽しく、総合的な満足度は高めです。

総プレイ時間は120時間(ヒーロー、覚醒、ノーマルクエストをほぼ全てクリア)で、まだ全ユニークエネミーの討伐や全クラスランクマックスなどやり残したことがあるほどの大ボリューム。

メインストーリークリアだけなら多分40~50時間ぐらいだと思いますが、上にも書いた通り本作の面白さはサブクエにあると思うので、サクッとストーリーだけやってクリアしたいという人にはあまりおすすめ出来ないかな。

じっくり腰を据えて遊べるJRPGを求めている人にはおすすめです。

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